【連載4】今こそ推したいアビスパ福岡:「スポーツのまち筑紫野」とアビスパ福岡

Jリーグ・アビスパ福岡のフレンドリータウンとして、地域とスポーツの連携を強化する筑紫野市。平井一三市長に、自治体としてクラブとどう関わり、どのような成果と可能性を見いだしているのかを聞いた。スポーツを軸としたまちづくりの実践例に迫る。
──躍進しているアビスパ福岡について、どう捉えていらっしゃいますか。この強さの要因はなんでしょうか。
平井一三氏(以下、平井) やはり1つには、監督が変わったというのが大きいでしょう。金明輝監督が就任するという報道が出た際、私が個人的に親しくしているサッカーに詳しい方に話を聞くと「アビスパ、必ず強くなりますよ」と言われました。その通りになっていますね。
クラブ側も、さまざまな努力をされていると感じています。集客もそうですし、スポンサー集めや資金繰りもそう。それでもJリーグの上位クラブと比べると、選手補強などに使える資金はかなり少ないのではないでしょうか。
──2023年度の数字ですが、売上高でいうとアビスパは28億7,400万円。この年にルヴァンカップ決勝で当たった浦和レッズは103億8,400万円。選手の人件費はアビスパ16億1,100万円に対して浦和が38億6,000万円ですから、本当に大きな差があります。
平井 そんな状況でもこうやって結果を出して強くなっていけば、スポンサーも増えて選手の給料も増える、いい循環になっていくでしょう。
──4月6日には、アビスパ福岡のホームゲーム・浦和レッズ戦で「筑紫野市応援デー」が行われました。試合のハーフタイムで市長がご挨拶に立たれましたね。
平井 そうですね、浦和のサポーターも大勢来てくださって、ベスト電器スタジアムはすごい熱気でした。試合はMF岩崎悠斗選手のゴールで勝ちました。たくさんの浦和サポーターを向こうに回した快勝で、本当に気分よく帰れましたね。当日配布されたマッチデーニュースには筑紫野市の名産品の紹介やふるさと納税の告知をさせてもらったり、また商工会にブースを出してもらったりしました。
──筑紫野市がアビスパ福岡とフレンドリータウン協定を締結したのは、2024年1月でした。今年で2年目ということになりますが、市側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
平井 筑紫野市は第七次筑紫野市総合計画のなかで「市民が織りなす スポーツと文化のまちづくり」を政策として掲げ、すべての市民がそれぞれの年齢やレベルに応じてスポーツを楽しめるまちづくりを目指しています。市内のスポーツ施設や青少年の指導体制の充実、体育協会や各競技団体との連携強化を行っています。アビスパ福岡とのフレンドリータウン協定もその一環です。アビスパの主催試合への市民の参加・招待、市民対象のサッカー教室や健康教室の実施だけでなく、子育て支援や青少年の健全育成と福祉の増進などについて協力していきます。また、Bリーグのライジングゼファー福岡とも同様の協定を結んでいます。スポーツが元気なところは、街も元気なんですよ。スポーツ振興は住む人を元気にしますし、人が元気になれば産業が活気づいていく。
実はですね、私は市長就任以前の県議会議員時代、県議会の「アビスパ福岡を応援する会」の役員をやっていたんですよ。

──そうだったんですか!それは存じ上げませんでした。
平井 当時、アビスパの川崎和夫常務と一緒に、「いろいろな自治体に応援してもらおうじゃないか」と目論んで、いろいろと動いていたんですよ。その際に筑紫野市もどうか、という話をしたのですが、残念ながらうまくいかなかった。で、私が市長に就任したら、川崎常務から「あのころの熱意はまだお持ちでしょうか」とご連絡をいただきまして。
──なるほど、そんな裏話があったんですね。
平井 もちろん、筑紫野市としてきちんとメリットがある、ということは皆さんにご理解をいただいたうえでの決定でした。24年は5月に筑紫野市応援デーが実施されたのですが、そこで出展した市の商工会からは「来年もぜひやりたい」というご要望をいただきました。それまでは、スポーツイベントと結びつけて市のアピールを行うような機会もありませんでしたし、そんな発想もなかった。新しい展開を始めることができた、というのが1年目の感覚でしたね。シーズンオフには、アンバサダーを務めるDF田代雅也選手、MF北島祐二選手が表敬訪問にきてくださいました。
──現在、アビスパ福岡のフレンドリータウンは18市町。これはホームタウンの福岡市を除いた数です。近年、アビスパは営業努力を重ねてフレンドリータウンを増やしていますね。
平井 応援する自治体が増えるというのは本当にすばらしいことです。筑紫野市の「応援デー」の機会は少なるかもしれませんが、多くのフレンドリータウンと多くのサポーターの力を結集してリーグ優勝を目指してほしいと願っています。私は先日の浦和戦のハーフタイムに「このまま勝ち進んで、1位になりましょう!」と挨拶しましたが、実際に1位になりましたね。これからも頑張ってもらいたいです。
──これは、毎試合「筑紫野市応援デー」にして、市長に挨拶していただかなければいけませんね。
【深水央】