注目を集めているバイオシミラー市場(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
それでは、現在のバイオシミラー市場はどのような状況だろうか――。
バイオ医薬品では、2012年から19年にかけて、特許期間が切れる医薬品が多数ある。韓国は、タンパク質、抗体関連のバイオ医薬品のオリジナルをつくることでは出遅れてしまった感があるが、バイオシミラーなら十分チャレンジできると、サムスンは判断しているようだ。
バイオ医薬品は現在、医薬品売上上位ランキングにいくつも入っていて、今後、バイオシミラーの需要も伸びることが、当然予想されている。バイオシミラーの市場規模は、現在は医薬品市場全体の20%前後にすぎないが、今後は50%くらいまでの成長が見込まれている。
バイオ医薬品は合成医薬品に比べ、副作用が少なく、とても安定しているため、クスリの効果も大きい。遺伝工学などバイオ技術も進歩しているため、今後、もっとバイオ医薬品の比重が増えていくことは間違いない。また、ヨーロッパを中心に先進国では、医療費を抑制するためバイオシミラーを推奨しているのも追い風である。
このように期待を集めているバイオシミラー市場ではあるが、現在、市場の期待を裏切った事例もすでにある。たとえばグローバル企業であるサンド社(Sandoz)は、1年間でわずか0.78%の市場占有率しか確保していない。当初の期待からすると、かなり外れた結果である。
もう1つの高いハードルは、バイオシミラーで成功を収めようとすると、オリジナルのバイオ医薬品と比べ、同等またはそれ以上の品質でなければならない点である。なお、バイオシミラー市場は一人勝ちの市場構造であるが、この市場にはすでにサンド社(Sandoz)、テバ社(Teva)のようなグローバル企業がおり、これらの企業と競争して勝たないと市場の確保ができない。
このような状況のなかで、サムスングループでは、バイオシミラー事業を次世代の主要事業として育成するため、バイオ関連の2社の上場を進めている。バイオシミラーの研究・開発を事業分野とする「サムスンバイオエピス」はナスダックに上場することが決まっているし、バイオ医薬品の委託生産を事業とする「サムスンバイオロジックス」はナスダックに上場するか、韓国のコスダックに上場するかを決めかねている。
サムスンバイオロジックスは、サムスングループの持ち株会社であるサムスン物産の子会社で、サムスンバイオエピスはその孫会社になっている。サムスンバイオエピスは来年の上半期にナスダックに上場し、1兆5,000億ウォンの資金調達を予定している。
来年、無事上場を果たせば、サムスングループとしては、初めての米国証券市場への上場となるため、一層の注目を集めている。一方、サムスンバイオロジックスも韓国市場に上場すると、時価総額は10兆ウォンになり、コスダック市場で一位に踊り出る可能性が高い。サムスンバイオロジックスの韓国市場への上場は、現在でも市場を引っ張っているバイオ関連株に勢いを増すことが期待されている。
サムスンバイオロジックスは、来年稼動が予定している15万リットル規模の第2工場に次いで、年内に15万リットル規模の第3工場の着工を予定しているうえ、2020年までに第4工場の建設も考慮している。計画通りに工場が建設されると、サムスンバイオロジックスは合計で40万リットル以上の生産規模を持つことになり、これは世界最大のバイオ医薬品受託製造会社になることを意味する。予定通りに生産規模が拡大すると、サムスンバイオロジックスは、スイスのロンザ(24万3,000リットル)、ドイツのベーリンガーインゲルハイム(22万リットル)を抜いて、世界最大規模になる。なお、スイスのロシュも大規模な工場建設の計画を持っているため、それが実現されれば、サムスンはロシュに次ぐ世界第2位のバイオ医薬品受託生産会社になるわけだ。
サムスンバイオロジックスは第1工場の建設に3,400億ウォンを、それから第2工場の建設に7,800億ウォンをすでに投資している。今後、会社を上場させることによって、第3工場と第4工場を建設する資金を確保するのが目的だ。サムスンバイオロジックスは設備、工場の建設、それから運営の面では世界最高の技術を確保していると付け加えた。
市場は、バイオシミラー事業がサムスングループの次世代の主な収益源として成長できるかどうかを、注視している。(了)
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