25年地価公示 博多エリア南はマンション、北はホテル

 天神とその周辺に勝るとも劣らない地価上昇を続けるのが、博多駅の周辺エリアだ。県内商業地の価格順トップ10には博多駅周辺から5地点がランクインしており、価格順2位の「博多駅前3-2-1」は今年の上昇率こそ0.6%と微増にとどまったものの、14年から7年以上連続で2ケタ増となっていたほか、17年の上昇率は20%を上回った実績がある。

 「博多駅前2-17-11」(12.3%)、「博多駅前1-21-4」(12.9%)、「博多駅前4-20-17」(12.6%)と駅前アドレスは軒並み大幅上昇となったほか、「住吉4-288外」(13.3%)、「博多駅南3-13-30」(13.5%)、「博多駅南1-14-14」(13.5%)、「美野島1-23-14」(13.8%)など、その周縁部は4年以上連続での2ケタ増を継続。これら博多駅の南側エリアでは主に賃貸マンション開発が活発となっており、売買事例も数多く確認できる。

 博多駅の北側エリアはより地価上昇が顕著で、「店屋町7-3」(12.5%)、「奈良屋町7-20」(14.5%)は5年以上連続での2ケタ増となったほか、「奈良屋町12-18」(15.5%)は4年連続、「上呉服町6-12」(11.6%)は3年連続での2ケタ増となった。「祇園町4-60」(9.5%)は今年こそ10%を下回ったが、前年まで4年以上連続で2ケタ増を続けていた。博多駅の南側エリアの主な需要は賃貸マンションだったが、これら北側エリアは賃貸マンションに加えてホテル開発需要も高く、規模の大小を問わず多くのホテル開発プロジェクトが進行中。とくにインバウンドを意識したホテル開発が目立っている。

 博多駅の目の前では、1,500坪超の敷地に地上14階・地下4階建の大型再開発、西日本シティ銀行本店本館建替えプロジェクトが来年1月竣工を目指して進められているほか、住吉通り沿いでは中央日本土地建物(株)(東京都千代田区)が今年6月の竣工予定で地上13階・地下2階建のオフィスビルを開発するなど、博多コネクティッドによる再開発プロジェクトが本格化。天神エリアでもオフィスビルの再開発が佳境を迎えており、両エリアいずれも今後のオフィス需給に影響を与えると見られている。

中洲・西中洲
 中洲エリアでも歓楽街とは一線を画した「中洲5-2-6」(11.8%)は3年連続で2ケタ増。ホテル、オフィス、賃貸マンション用地の引き合いは強く、平米単価は190万円と評価されたが、実際に取引されるとすれば価格はその1.5倍以上となるだろう。
 国体道路沿いの「西中洲1-11」(15.1%)は、より歓楽街の要素が強いことからコロナ禍で大きく落ち込んでいた時期があり、その反動で大幅な上昇を続けている。

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 福岡市は住宅地、商業地ともに13年連続で上昇を続けてきたが、今年は上昇率が鈍化する地点が少なからず目立った。それでも「もう天井」と言われながらも、福岡市の地価は右肩上がりの上昇を続けている。とくに、博多区・中央区の中心部では、コロナ禍前を超えるホテル用地の取得合戦が行われており、博多駅から徒歩数分圏内では坪2,000万円超での取引も少なからず聞かれるようになっている。インバウンド需要がどこまで伸びるかは不透明な部分もあるが、現状、福岡市内のホテルは不足している状況で、宿泊単価は高水準で推移。地場不動産会社からは、「開発アセットをホテルに集中する」という声も聞かれ始めたようだ。市内中心部の地価は上昇余地が大きいと見られるが、建設コストおよび金利の上昇などにより、今後は市内でも「上昇」「横ばい」「低下」の三極化が進んでいくだろう。

【永上隼人】

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