全体としてやや停滞気味──小倉エリア再開発(前)

第2弾着工も盛り上がらぬコクラリビテーション

JR小倉駅
JR小倉駅

 前項では旦過市場の再開発について取り上げたが、北九州市の中心市街地である小倉駅周辺では、市が主導する再開発プロジェクト「コクラ・クロサキ リビテーション」が進行。また、それ以外にも新たな分譲マンションの開発など、いくつかの開発が随時進んでいる。本項では、旦過市場以外の小倉エリア内の動きについて見てみたい。

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 2021年9月に発表された「コクラ・クロサキ リビテーション」は、まちづくり構想の実現に向けて、北九州の都心である小倉地区と、副都心である黒崎地区を対象に、都市機能の更新とさらなる魅力向上を目指すプロジェクトである。プロジェクト名に付けられた「リビテーション」とは、「リビルド(Rebuild/建替え)」と「インビテーション(Invitation/引き込む)」を掛け合わせた市独自の名称で、補助金などの支援策や各種規制の緩和などにより、民間開発を誘導して老朽化ビルの建替えなどを促していくもの。対象地区は小倉駅および黒崎駅それぞれの周辺概ね半径1kmのエリア内で、27年3月末までに着工するビルが対象となる。なお、黒崎駅周辺も対象地区として名称に「クロサキ」が入っているものの動きはほとんどなく、実質的には「コクラリビテーション」といって差し支えなく、細かい部分の違いはあれども概ね“小倉ビッグバン”といえるプロジェクトだ。

 そのコクラリビテーション第1弾となった「BIZIA(ビジア)小倉」は、魚町3丁目の旧・西日本シティ銀行北九州営業部が入っていたビルの解体・建替えを行ったもので、事業主は地場不動産会社の(株)ミクニ(北九州市小倉北区)。S造・地上13階建のオフィスビルの施工を清水建設(株)が担当し、24年7月に竣工。24年12月にグランドオープンを迎えた。同ビルは北九州市内の民間オフィスビルとして初となる、市内でつくられた再生可能エネルギー100%の電力(地産地消再エネ)を導入し、快適性・省エネ・企業価値向上に寄与する「グリーンスマートビル」の普及など、市が取り組むSDGs未来都市の実現に寄与するもの。また、公開空地を設けて、地域のビジネス・交流拠点としての役割も担うとしている。

(左)BIZIA小倉/(右)小倉京町センタービル
(左)BIZIA小倉 / (右)小倉京町センタービル

 そして24年12月、第2弾となる「小倉京町センタービル」が着工した。同ビルは、JR小倉駅から徒歩5分の京町3丁目にあった京町センターパーキングおよび五十鈴ビルディングの跡地で計画されている地上11階建のオフィスビルで、敷地面積1,244m2、延床面積7,974m2。縦スリットを採用したスマートな外観のビルは最新設備を備え、基準階は約170坪の無柱空間となり、入居企業に合わせた分割対応が可能。時代が求める「新たな働き方」を実現できるワークプレイスや、オープンスペースの創出により、市民の憩いの場となるようなオフィスビルを目指すとしている。事業主は地場不動産開発の中西興産(株)(北九州市小倉南区)で、施工は積水ハウス建設中国四国(株)CRE事業部が担当し、26年8月の竣工を予定している。

 こうして第2弾が着工したコクラ・クロサキ リビテーションだが、市の発表から3年半が経過したにも関わらず、表に出てきているプロジェクトがわずか2件、それも小倉駅周辺エリアのみというのは、やや出遅れている感が否めない。24年3月にはエリア内の主に幹線道路沿いで、指定容積率を最大800%まで緩和するという“テコ入れ”を行ったものの、目立った効果は見られないままだ。小倉駅から半径1kmのエリア内には築40年以上が経過したオフィスビルが20棟程度確認されているといい、市はそのうち半数の10棟程度をリビテーションしていきたい考えのようだが、着工期限となる27年3月末まで、すでに残り2年を切っている。今後、駆け込み的に次々と新たなプロジェクトが発表されるのか、それともとくに動きがなく、このままひっそりと期限を迎えるのか──。まずは次なる第3弾のプロジェクト発表を待ちつつ、引き続き動向を見守りたい。

火災跡地は暫定的に広場に 中屋ビルも建替えへ

 24年1月3日、小倉駅からほど近い小倉北区魚町の「鳥町(とりまち)食道街」で、大規模火災が発生した。この火災では、隣接する魚町銀天街内の店舗も含めて36店舗、住宅1世帯を含む約2,730m2が焼損。最終的に鎮火が確認されたのは、火災発生から2日後の1月5日だった。

 その後、焼け跡に残ったがれき等の撤去は24年6月下旬までに完了したが、同地は地権者が多く、再建の協議は難航した。地権者らは「魚町地区の復興を考える会」を設立し、魚町地区の復興に向けた土地の活用方針の検討や、再開発を想定した暫定利用の検討などを実施。全国の再開発や被災した商店街の復興事例を学ぶ勉強会が重ねられた結果、北九州市や北九州商工会議所の協力の下、一部を地場不動産会社の(株)リアルエステートサービス(北九州市小倉北区)が5年間の期間で借り上げ、暫定的に広場として活用することとなった。

 5月9日にオープンした広場は「魚町みらい広場」と名付けられ、オープニングイベントとして同日夕から「北九州ハイボールフェスタ」が開催された。広場ではイベントやテント、キッチンカーなどの出店が企画されており、今後は月に数回ペースでイベントを開催していく方針。また、広場として暫定活用する間に、地権者らでつくる再開発協議会が本格的な再開発に向けての検討を進めていくとしている。

(左)広場として暫定活用される「鳥町食道街」の火災跡地 / (右)解体中の中屋ビル
(左)広場として暫定活用される「鳥町食道街」の火災跡地
(右)解体中の中屋ビル

 老朽化が進んだビルをリノベーションして新たな価値を創出するモデルケースとして知られていた、魚町3丁目にある「中屋ビル」も現在、建替えに向けた解体工事が進められている。

 地場不動産会社・中屋興産(株)の本社ビルである同ビルは、1967年竣工(72年増築)の地上5階・地下1階建。09年12月に1~4階部分に入居していた当時の核テナントが退去したことで、代わりとなるテナントを探すも、ビルが古く旧耐震基準であったことや、当時の魚町商店街自体の機運が低迷していたことで、テナント誘致が難航。そのため、リノベーションによって用途・機能の変更を行うとともに、建物の性能・価値を向上させる方針へと転換した。11年6月の「メルカート三番街」を皮切りとして、ビル内に「ポポラート三番街」「ビッコロ三番街」「フォルム三番街」などのクリエイティブ拠点を次々と開業。新たな人を呼び込むことで、エリアの賑わい創出に寄与していた。だが、市がコクラ・クロサキ リビテーションなどの再開発を進めるなかで、老朽化が進む同ビルにおいても、ついに建替えへと踏み切った模様だ。

 同ビルは現在、25年5月末までの工期で解体工事が行われている。解体後には、中屋興産の新たな本社ビルが建てられる予定で、1~3階部分が商業フロア、4~8階部分が賃貸マンションフロアとなる模様。商業フロアには、以前のメルカート三番街のようなクリエイティブ拠点が設けられるといい、新ビル完成後には再び、エリアの賑わい創出への寄与が期待される。

 なお、中屋興産は前述の「魚町みらい広場」のほか、魚町銀天街の入り口付近約0.37haで計画されている「魚町三丁目2番地区第一種市街地再開発事業」にも関与しているという。同再開発は、老朽化した低層建物群をRC造・地上22階建のビルに建替え、低層部を商業・業務用、高層部を住居とすることで、土地の高度利用を図ろうとするもの。再開発ビルの開業は、27年度を目指すとしている。

魚町三丁目2番地区第一種市街地再開発事業
魚町三丁目2番地区第一種市街地再開発事業

(つづく)

【坂田憲治】

(後)

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