中島久雄Ambitious Asia(株)代表は、西部瓦斯(株)(西部ガス)子会社で戸建住宅を中心とした不動産の開発・販売を手がける九州八重洲(株)時代からフィリピンでの不動産事業に携わっており、現地での長い経験と広い人脈を有する。2010年代半ばごろ、駐在ベースでは利益を思うように出せないと感じ、プロジェクト推進のために西部ガスに現地法人を設立するよう説得。17年6月に現地法人設立を実現した。中島氏は当時取締役副社長で、22年には代表取締役社長に就任した。
現地でのコンドミニアムの賃貸・売買やタウンハウス事業を手がけ、23年3月期には海外住宅事業の売上を10億円規模に成長させた。また、現地に小学校校舎2棟を寄贈したほか、別の小学校にはウェルカムゲートを寄贈するとともに通学路の舗装を行ったり、毎年現地社員と一緒にボランティア活動や孤児院への訪問を行ったりと社会貢献にも努めた。

右から1番目が中島代表
24年10月、中島氏はフィリピンでの不動産事業を行うため独立を決意した。現在は、海外で不動産・住宅事業に携わりたいという事業者を現地に案内し、現地企業を紹介するかたちで事業を展開している。毎月10日程度現地に滞在し、現地パートナー企業と土地の選定から造成工事や建築工事の管理、販売のアドバイスや管理、引渡しなど、多岐にわたって日本とフィリピンの企業間の架け橋となっている。
現在進めているプロジェクト「エコベルデ リパ 第2期タウンハウス&デュプレックス」(バタンガス州リパ市)は計347戸。リパ市はマニラ郊外の文教都市で、工場団地には複数の日系企業も進出している。価格は約700~1,000万円と現地住民の間で好評とのことだ。昨年11月から販売開始したにも関わらず、今年8月末時点で347戸中261戸の契約が完了し、販売率は75%に達している。現地パートナーとの協業も順調で「1戸60日」というペースで建設が進んでいる。引き渡しは45戸が完了し、毎月15戸ずつのペースで進められる見込みという。

前列左から1番目が中島代表
なお、フィリピンでは業種別に外資の出資比率に対する規制が定められており、不動産業ではフィリピン側が60%以上を保持し、外資は40%以下に抑えることが求められている。現在、中島氏が関わっているプロジェクトでも、40%に達しないよう30~35%に抑えており、今回のプロジェクトは日本側の資金調達額が約5億円で、残りをフィリピン側が出しており、総額約14億円という。
中島氏が着手した15年当時には、日本の不動産会社の進出は数えるほどしかなく、22年以降、日本から大手デベロッパーや地場大手の西日本鉄道(株)が進出し大規模なプロジェクトを展開するようになった。このことからも、中島氏はいち早くフィリピンの住宅市場の有望性を見込んだ先駆者的な存在と言える。引き続きGDP成長率が毎年5~6%あり、長期的な経済成長と人口ボーナスにより堅調な住宅需要が見込める有望なマーケットと評価、今後も日本の安全で良質な住宅を広げたい事業者と、低廉ながら良質な住宅を求めるフィリピンの住民、双方に役立つかたちで事業を展開していく。
【茅野雅弘】