偽アカウントによる詐欺がはびこるXの実態

 9月3日に記事『人気の投資ストラテジスト・武者陵司氏を騙る偽アカウントにご注意!』を掲載した。詐欺アカウントの詳細をお知らせする。

偽アカウントの投稿例

 9月3日の記事で読者に対して緊急の注意喚起を行うとともに武者陵司氏本人とも情報共有したところ、記事で指摘したXの偽アカウントは削除。そのアカウント中に掲載されていたLINEアカウントも現在は凍結されている。

 ところが、Xにはほかにも武者氏を名乗るアカウントが13件ほど残っており、すべてが偽アカウントと見られる【画像2】。

 そのうちの1つを紹介しよう【画像1】。Xの投稿はほぼ毎日行われており、たとえば「4月15日」の投稿では一見まともそうな市場分析が行われている。

 だがそれらの投稿のなかに、数日に一度、投資グループへ勧誘する投稿が紛れ込んでいる。「4月11日」の投稿がそれで、末尾のLINEアカウントへ誘導される。これをクリックするとLINEのQRコードが示される。スマホのLINEで読み込んで登録しようとすると、海外の電話番号を利用しているアカウントであるという注意文言が出ていた(このLINEアカウントも9月3日の記事掲載後に凍結された)。

【画像1】これは武者氏本人のアカウントではありません。偽アカウント例です。 AIで増殖するネット詐欺
【画像1】
これは武者氏本人のアカウントではありません。
偽アカウント例です。

AIで増殖するネット詐欺

 近年、XをはじめとするSNSでは、AIを活用して市場分析風の文章やグラフを自動生成し、本人になりすまして発信する偽アカウントが急増している。生成AIは膨大なデータを瞬時に参照して文章を組み立てることができるため、従来の詐欺投稿に比べて「もっともらしさ」が格段に高まっている。

 とくに金融・投資分野では、投稿の一貫性や専門用語の使い方、グラフ・図表の体裁などが詐欺判定の重要な手がかりとされてきたが、AIはこれらを自動で模倣し、短時間に大量の投稿を生成できる。その結果、表面的には「信頼できる情報源」のように見えるアカウントが乱立し、投資グループや暗号資産取引などへの勧誘に悪用されるケースが増えている。

 また、生成AIは「複数アカウントの同時運営」や、「異なる人格演出」も容易なため、それらの連携による偽アカウント群(ボットネット)が形成され、より精巧な詐欺スキームが展開されるリスクが高まっている。

 こうした背景を踏まえると、単なる「本人確認バッジ」や「アカウント削除」だけでは対策が追いつかない現実が浮かび上がる。SNS事業者にとっても、AIによる詐欺投稿の検知やリアルタイム監視を高度化する必要があり、利用者側も公式情報源の確認、リンク先の慎重なクリックなど自己防衛意識を強めることが求められる。

【画像2】これら13個のアカウントもすべて偽物
【画像2】
これら13個のアカウントもすべて偽物

【寺村朋輝】

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