第三次安倍政権こと高市政権は「米国第一・日本二の次」

高市首相
高市首相

    「第三次安倍政権」と呼ぶのがぴったりの高市政権が発足。「トランプ大統領のポチ」と揶揄された安倍元首相と同様、“米国下僕外交”を始めた。日米首脳会談に先立ち、防衛費増額を米国側に申し出たのだ。

 「日米黄金時代」などと銘打ってメディアは高市首相とトランプ大統領の親密な関係を華々しく報じているが、その実態は、時代遅れの中古のトマホークなど米国兵器爆買いをしてトランプ大統領の歓心を買った安倍元首相の二番煎じ。「米国ファースト・日本二の次」という対応を始めたということだ。

 第二次安倍政権では日本の防衛費増額で米国軍需産業が大儲けする一方、日本国民の実質賃金は下がり続けた。安倍元首相の後継者を自認する高市首相が権力の階段を昇りつめたことで、同じ悪夢が繰り返されようとしているのに、大メディアは警告を発するどころか、日米首脳の一挙一動を華々しく伝える政府広報機関に成り下がった。

 そんな御用報道の象徴が、日米共同声明も日米共同会見もなかった異例の事態を問題視する報道がほとんどなかったことだ。元外務官僚の作家・佐藤優氏は10月29日、新党大地の支持者向け勉強会の「東京大地塾」で、日米共同声明も日米共同会見もなかったことは異例だと指摘。「日米共同会見で高市首相が立ち往生してしまうことを恐れたのではないか」とも指摘した。

 そこで私は質疑応答タイムで、「忖度しない米国の記者の質問に対して高市首相が答えに窮する事態が想定された」といった見立てに違いないと思って、「どういう質問に対して立ち往生することを恐れたのか」と聞くと、佐藤氏からは「日米共同会見に高市首相を出さない方がいいだろうという考えが首相周辺にあったのではないか」という答えが返ってきた。

 また佐藤氏は、高市政権が防衛費増額を赤字国債でまかなう恐れについても言及。財政破綻につながる危険性についても警告を発していた。

 称賛報道に明け暮れた大メディアと違って佐藤氏は、日米首脳会談の異例さと防衛費増の高市政権の危うさをきちんと伝えていたのだ。

 ちなみに立憲民主党の野田代表も10月31日の記者会見で、日米共同声明も日米共同会見もなかった異例さを指摘した。動画を後からでも見ることができる東京大地塾での佐藤氏発言を聞いたためかは分からないが、同じ点に着目していたのだ。

 と同時に、「防衛費増額の財源をどうするのか」「(防衛費増額の)前倒しにする根拠は何か」などを問い質す考えも野田代表は明らかにした。

 高市政権の危うさは、防衛費増額だけではない。コメ増産政策からの転換で食料安全保障が疎かになることだ。

 10月24日の鈴木憲和・新農水大臣会見で、私は次のような質問をした。

 ──小泉前大臣は、米増産は食料安保上もプラスだというのに対して、鈴木大臣は、それを継続しようとしないと。方針転換しようとしているが、台湾有事のときに、シーレーン封鎖で食料の輸入が途絶えたときに、日本人の多くが餓死しかねないと専門家が指摘しているが、こういうリスクはどう考えているのか。

鈴木憲和・新農水大臣
鈴木憲和・新農水大臣

    鈴木大臣  横田さんから質問いただくことになる日がきて大変、今日は光栄に思っている。私としては、基本的にはまず、需要に応じた生産、これが基本だろうというふうに思っている。ただ、さまざまな安全保障上のリスクというのは、とくに昨今高まっているというふうに言われているから、そうした場合でも、しっかりとした備蓄の運営、これをやることによって、私はしっかりと対応ができていくものだというふうに思っているし、それをやるのが農林水産省の責任であると思っている。

 コメ増産を止めたらしっかりとした備蓄の運営ができなくなるとも思ったが、この日は会見時間が限られていたため、再質問は控えた。次回以降の会見で同趣旨の質問を続けるつもりだ。

 「台湾有事は日本の有事」が口癖だった安倍元首相の後継者を自認する高市政権下では、防衛費増額はもちろん日本が米中戦争に巻き込まれるリスクは高まる。その一方でコメ増産を止めてしまえば、食糧安全保障はますます疎かになり、シーレーン封鎖で食料輸入が途絶えて日本人の多くが餓死する恐れもあると専門家は指摘している。

 大メディアの高市政権称賛報道に騙されてはいけない。いまや高市首相は国民の命を脅かす疫病神のような存在になりつつあるのだ。

【ジャーナリスト/横田一】

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