玄海町ヴルーヴ破産問題(4)、住民に限られた玄海町の情報公開請求権は改善が必要
玄海町の情報公開請求条例
以上の記事は、玄海町に対する公文書公開請求により開示された文書を基に執筆した。
情報公開請求制度は、各自治体がそれぞれの情報公開条例に基づいて運用しているが、玄海町情報公開条例はその請求権者を次のように定めている。
(1) 町内に住所を有する者
(2) 町内に事務所又は事業所を有する個人及び法人その他の団体
(3) 町内に存する事務所又は事業所に勤務する者
(4) 町内に存する学校に在学する者
(5) 前各号に掲げるもののほか、実施機関が行う事務又は事業に具体的利害関係を有するもの
つまり、情報公開請求権は、実質的に玄海町の住民にしか認められていない。
今回、このような記事として、玄海町のずさんなプロポーザル公募の実態を報道することができたのは、情報提供者の協力による。
玄海町の情報閉鎖性は地域・国家の大きなリスク
玄海町は言わずと知れた、玄海原発が立地する自治体だ。実は、玄海町のみならず日本全国の原発立地自治体でも、情報公開の請求権を限定している自治体は少なくないという。玄海町はじめ原発立地自治体がこのように情報公開を外部に対して閉ざしているのは、原発関連の情報公開請求が膨大になることへの対策もあると思われるが、その結果、原発関連のみならず行政全体の不透明さを生み出しており、それが地域の閉そく感として住民にさらなる負担を強いている。
玄海町の人口は25年8月31日現在で4,735人。長年にわたる莫大(ばくだい)な原発関連収入への依存によって行政施策はゆがみを生じている。しかし、この小さい町に居住する住民が、情報公開請求をして内容をチェックしたり、行政に異を唱えたりするのは、かなり勇気がいることだ。その結果、今回のヴルーヴ問題のような規律のない事業がやすやすと推進されてしまったといえる。もし外部からもチェックが可能な自治体であれば、このような事態は生じなかっただろう。
また、原発立地自治体としても情報の不透明性は見過ごせない問題だ。原発は万が一、事故が起これば、周辺の広範な地域へ影響がおよぶ。7月には玄海原発でドローンと見られる正体不明の物体が上空を飛行する事案も発生しており、近年、安全保障上の懸念が増大している。そのように重要な自治体の行政をチェックする機能が、住民だけに限られている現状は適切ではない。
玄海町の情報公開制度の問題点は、住民だけの問題ではなく、安全保障の観点からも広域的な地域の課題として改善が必要だ。
(了)
【寺村朋輝】