百貨店売上高7カ月ぶりプラス転換 九州3社も全社増収、井筒屋プラス転

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 日本百貨店協会が9月25日に発表した2025年8月の全国百貨店売上高(既存店ベース)は、前年同月比2.6%増の4,139億円となり、7カ月ぶりにプラスに転じた。

 地域別では、10都市(10地区)が2.9%増で7カ月ぶりのプラス、10都市以外(7地区)が1.4%増で11カ月ぶりのプラスとなった。国内売上高は3.5%増だった。

 インバウンド(免税売上高)は4.7%減の441億7,000万円で6カ月連続のマイナスとなったが、減少幅は7月の36.3%減から大幅に改善した。購買客数は49万4,000人(前年同月比8.9%増)と8月として過去最高を記録したが、1人あたりの購買単価は12.4%減の8万9,000円となった。

 商品別では、記録的猛暑により衣料品が2.0%増となった。Tシャツやカットソーなどの盛夏商材が8月後半まで好調を維持した。雑貨は6.0%増、家庭用品は0.9%増だった。一方、紳士服・洋品は7カ月連続、生鮮食品は17カ月連続でマイナスとなった。

 九州では福岡県の主要3社がそろって前年実績を上回り、同地区百貨店の安定した成長基調が鮮明になった。

 博多大丸は前年同月比7.0%増(7月は11.6%増)で35カ月連続のプラス成長を維持した。岩田屋三越は4.3%増(同7.3%増)で30カ月連続のプラス、井筒屋は1.8%増(同0.9%減)でマイナスから持ち直した。

 3社とも台風10号の影響で月末の2日間が臨時休業となったが、全社で前年実績を上回った。化粧品やラグジュアリーブランドの売上が牽引し、とくにインバウンド客による免税売上の回復が寄与した。韓国・台湾を中心としたアジア系観光客の来店が増加し、博多港や福岡空港を利用した観光客の消費が堅調に推移している。

 九州地区は地理的にアジアに近く、特に韓国・台湾・中国からの観光客にとってアクセスしやすい立地にある。福岡3社の好調な業績は、この地理的優位性を活かしたインバウンド需要の取り込みが奏功している証拠といえる。

 また、熊本県ではTSMC進出に伴う外国人人口の急増(21年から24年にかけて台湾人が約8倍に増加)により、鶴屋百貨店では23年に「特命グループ」を結成し、半導体関連企業60社強への営業を強化するなど、新たな顧客層開拓に向けた取り組みを進めている。

 全国の大手各社では、大丸松坂屋百貨店の免税売上高が6.7%増とプラスに転じた。客数が24.9%増となる一方、客単価は14.6%減だった。そごう・西武では大阪店が8.6%増、日本橋店が8.0%増、大宮店が13.7%増となった。

 調査対象は70社178店舗。次回9月分の発表は10月25日の予定。

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