出水市中2女子自殺 責任の在処(8)~いじめアンケートに開示命令
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鹿児島地裁「不開示を前提としていない」
12月15日、鹿児島地裁は出水市に対し、11年9月の出水市中2女子自殺に関し、全校生徒に実施したいじめ調査のアンケートについて、「不開示を前提としていない」などとして、亡くなった女子生徒の遺族に開示するよう命じた。
2011年9月1日、当時13歳の女子生徒が、高さ4メートルの金網を裸足で乗り越えて九州新幹線の線路に飛び込み自殺するという悲惨な事件が起きた。中学校側は、遺族の願いもあり、「遺族のため」とさえ記された真相究明のためのアンケートを全校生徒に対して実施。しかし、その結果は「個人が特定される」「開示を前提としていない」などとして遺族に一切開示されず。そのうえ、出水市教育委員会(以下、市教委)は、調査結果で「いじめは直接的なきっかけではない」とする見解を出した。
女子生徒の祖父・中村幹年さんによると、このアンケートに関しては、12年4月に他校へ転勤した事件当時の中学校校長は、遺族に結果を見せることを約束していたという。手のひらを返したようなアンケートの不開示に納得がいくはずはない。遺族は、多くの支援者の協力も得て、アンケート開示を求める署名運動を実施し、全国から約1万4,000人分の署名を集めた。そして、何十回も市教委に開示を求めた。それでも、市教委の不開示決定は覆らず、ついに司法に判断を委ねるに至ったのである。
そして悲劇から4年3カ月が過ぎた15年12月15日、鹿児島地裁は出水市の不開示決定を取り消し、個人を特定できる情報を除けば、結果をまとめた写しの開示はできるとした。
「直接的ではない」という詭弁
女子生徒が命を絶ったのは2学期の始業式の当日。アンケートに拠らずとも、女子生徒の死を悼む同級生やその保護者からは、遺族のところへ学校の状況が伝えられていた。一方、市教委の調査報告は、『いじめ』ではなく『いたずら』とし、その都度、現場で指導してきたと主張する。だが、その『いたずら』のなかには物品の紛失など、『いじめ』の事象とも考えられる内容が含まれていた。
遺族が直に耳にする情報と市教委の調査報告の温度差は、不開示決定への不信感を生んだ。筆者は、「直接的ではない」という言葉は、責任逃れをする大人たちの詭弁に過ぎないと考える。そして、大人たちの責任逃れ・自己保身の姿勢は、第2、第3の子どもたちの悲劇を生んでいくのだろう。女子生徒の遺族だけの問題ではなく、少なくとも出水市民は、次の世代を担う子どもたちを委ねる教育者たちの姿勢の問題として、この問題に注視すべきではないだろうか。鹿児島地裁の開示命令を受けた出水市は、「開示の是非を含めて検討する」としている。女子生徒の遺族の辛い戦いがこれ以上長く続かないことを願ってやまない。
【山下 康太】
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