DF湯澤聖人がコーナーキックから値千金のゴール
10月4日(土)、明治安田生命J1リーグ第33節が行われ、アビスパ福岡はホームのベスト電器スタジアムで横浜FCと対戦。J1残留がかかる大一番で福岡が1-0で勝利し、貴重な勝ち点3をつかんだ。これで福岡は8試合ぶりの白星となり、ホームでの勝利は6月21日の第21節アルビレックス新潟以来、およそ3カ月半ぶりとなる。

試合は雷雨の影響により、キックオフ時間が当初の予定からおよそ90分遅れての開始となった。コンディション調整と集中力の維持が難しいなか、立ち上がりのペースをつかんだのはホームの福岡。開始早々の2分、DF橋本悠のロングスローから最後はMF見木友哉が頭で合わせたが、相手GKスウォビィクの好セーブに阻まれる。
その後も橋本やFWウェリントンが積極的にゴールを狙うが、再三の決定機を生かせず前半はスコアレスで折り返す。
後半に入っても攻撃的な姿勢を崩さない福岡は51分、コーナーキックのチャンスに橋本が低いグラウンダーのボールを入れ、FW名古新太郎がトリッキーにスルーしたボールがゴール前のDF湯澤聖人の足元へ。難しい体勢ながらも湯澤が素早く反応し、左足で冷静に流し込み先制点を奪う。福岡在籍6年目、近年は怪我に苦しんだ湯澤の2年ぶりのゴールにスタジアムのファン・サポーターは歓喜。総立ちでゴールを称えた。

1点を追う横浜FCは攻撃の手を強め、福岡ゴールに迫るが、福岡の守備陣の連携で跳ね返す。しかし、73分に横浜FCのFWジョアン・パウロが抜け出し、ゴールキーパーと1対1の場面をつくられるが、GK小畑裕馬のビッグセーブでピンチを脱する。また、試合終了間際には相手GKも攻撃に加わって点を奪いに来るが、福岡の全員守備で守りきり、1-0の勝利となった。
値千金のゴールについて湯澤は、「デザインされたセットプレーは、チームとして何度も繰り返し練習してきたので、決めることができてよかった。攻守が移った際にはすぐに自陣へ戻らないといけないサイドバックの自分が、なんでゴール前にいるんだというのは置いといて(笑)、ていねいに決めることができた。勝てない時は何をしても不思議とうまくいかないものなので、この勝利を機にうまく歯車が噛み合い、残りの試合も良い方向にいけばいいなと思う」と試合後に振り返った。
残留へ一歩前進、若手のひたむきさ際立つ
一時期は暫定ながら首位に位置しながらも、夏場以降勝ちきれない試合が続き、“いつの間にか” J1残留争いに巻き込まれてしまった福岡。リーグ戦は終盤戦に突入し、1試合の結果がJ1に残留できるかどうか大きく左右する時期に入った。
福岡は前節終了時点で16位。J2降格圏のボーダーライン上に位置する18位の横浜Fマリノスとの勝ち点は6に迫り、今節の相手である17位の横浜FCとも同じく6差と、残留争いから抜け出すためには、絶対に負けられない相手だった。

そんな大事な試合で、金明輝監督から大きな期待とともにフィールドプレーヤーで先発を託されたのは、2人の若手選手。1人は今季加入した大卒ルーキーの橋本、そしてもう1人は来期の加入が内定しているJFA・Jリーグ特別指定選手のFW佐藤颯之介だ。
正確なキックが魅力の橋本は、試合を重ねるごとに存在感を高めている。今節も橋本のコーナーキックから得点が生まれた。大きな得点機を逃した場面もあったが、チーム最多の5本のシュートを放ち、初ゴールへの期待を抱かせる内容だった。

佐藤は、宮崎産業経営大学所属の大学生ながら、YBCルヴァン・カップとリーグ戦の計6試合に出場し、YBCルヴァン・カップ第2回戦の栃木SC戦ではゴラッソな得点も決めている。今季リーグ戦初先発となった今節は、75分に交代するまで豊富な運動量とスピードを武器に攻守にわたって献身的なプレーを見せ、勝利に貢献。また、佐藤はこの日のチーム最速スピードも記録している。
福岡は横浜FC戦の勝利により、降格圏との勝ち点差を9に広げ、J1残留に向けて大きく前進。リーグ戦は残り5試合、次節は6位の町田ゼルビアとの一戦を控える。チームは依然として多くの負傷者を抱えるなど厳しい状況は続くが、フレッシュな若手のエネルギーが起爆剤となり、1つでも上の順位を目指す戦いに期待したい。
クラブの歴史を紡いだレジェンドが集結!
この日は、アビスパ福岡創立30周年を記念し、国内外から集まった歴代の名選手たち32名と多彩なゲストによる特別OB戦が開催された。試合は、ピッチ内に水たまりができるほどの激しい雨の中行われた。あいにくのピッチコンディションで、現役さながらの華麗なプレーを披露するには厳しい環境ではあったが、水しぶきを上げながらの正確なパスやシュートなど、レジェンドたちの衰えないテクニックと豪雨ならではの珍プレーも飛び出して、スタンドを沸かせた。

クラブはこれまで、資金難による消滅の危機や5年周期のJ2降格など、多くの試練を乗り越えてきた。決して順風満帆とはいえない30年の道のりを、選手とサポーター、クラブスタッフが力を合わせてネイビー・シルバーの誇りを守り抜いてきた。その積み重ねた歴史と絆を胸に、アビスパ福岡の新しい未来をこれからも紡ぎ続けて欲しい。
【川添道子】