福岡と湘南、ともにJ1残留がかかる一戦に
10月26日(日)、明治安田生命J1リーグ第35節がアビスパ福岡のホームであるベスト電器スタジアムで行われた。福岡と対戦するのは、19位の湘南ベルマーレ。福岡は引き分け以上でJ1残留が決まり、湘南は引き分け以下でJ2降格が決まるという、両チームにとって来シーズンの運命を左右する重要な一戦となった。
福岡の先発には、負傷と思われる離脱から復帰したFW碓井聖生、MF藤本一輝、DF前嶋洋太、DF池田樹雷人の名が並んだ。2試合無失点中のDF陣を大胆に入れ替えた理由について、金明輝監督は「ゼロで抑えているのに、なぜ変えたのかという疑問は当然あるかと思いますが、前節からの練習を見て良い状態の選手を選んだということです。長期離脱していた池田に関しては、スタートからプレーをしてどれくらいできるのかというところを測らないといけないので、復帰してから約1カ月半経ちましたし、機は熟したなと」と話した。
前半の入りは前がかりの湘南に対して、金監督が送り出したDF陣がしっかりと対応。前半10分、自陣の連携ミスからボールを奪われピンチを招くも、以降は徐々に福岡が主導権を握り、福岡が攻め込む場面が続く。しかし、ゴール前までボールを運びシュートを放つも、湘南の体を投げ出す気迫の守備でゴールを決め切れず、スコアレスドローで折り返す。
後半も福岡が攻め込む展開となり、決定機を幾度もつくり出すが、シュートが枠に飛ばなかったり、湘南の守備に阻まれたり、得点にはならず。シーズン序盤からの決定力不足は、終盤になっても解消されないままだ。
このままスコアレスドローで試合終了かと思われた後半AT(アディショナルタイム)3分、湘南のゴール前で競り合ったDF安藤智哉がファウルを受け、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)判定の結果、福岡がPKを獲得。これをMF見木友哉が冷静に決める。この1点を守りきり、福岡が1-0で勝利。その結果、福岡はJ1残留、湘南はJ2降格が確定した。
10位以内を目指してラストスパート
試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、スタジアムには福岡の勝利とJ1残留を祝う歓声が響き渡った。だが、その直後には湘南の選手たちを称える拍手も広がった。ピッチ上では、倒れ込む湘南の選手に声をかける福岡の選手の姿があり、スタンドにも悲喜こもごもの感情が入り混じった空気が漂っていた。
この勝利で、アビスパ福岡は6年連続でJ1の舞台に立つ権利をつかんだ。しかし、これまで降格と昇格を繰り返した苦難の歴史を歩んできたクラブだけに、湘南の姿にかつての自分たちを重ねたサポーターも少なくなかっただろう。試合後、多くの人が湘南サポーターの陣取るゴール裏を静かに見つめていた。
試合後のインタビューで福岡のキャプテン・奈良竜樹は「(対戦チームが)目の前で降格が決まったのは初めてで。J1残留を素直に喜ぶ気持ちもあるが、残酷だなと…。自分も降格経験があるんですけど、J1に居続けることは本当に簡単ではないと、改めて肌で感じました」と語った。
今節J1残留を決めた福岡はシーズン序盤から波があり、11勝11分13敗という戦績で現在12位。開幕前は6位以内を目標に掲げていたが、徐々に上位との勝ち点が広がり、新たな目標を10位に修正した。今シーズンも残り3試合。10位までの勝ち点差は5と、実現可能な位置につけている。金監督は「10位で終わるのと、15、16位で終わるのでは全然違う。残りの試合でどのような振る舞いができるか、J1で戦うにふさわしいゲームができるかが問われる」と、10位という目標に向けて最後まで全力で戦う姿勢を見せた。
DF池田が約1年2カ月ぶりに怪我から復帰!
左膝の前十字靱帯と外側半月板を損傷の重傷で長期離脱していたDF池田樹雷人が、約1年2カ月ぶりに復帰をはたした。先発で出場した池田は、試合開始早々から積極的なプレーで、怪我からの復帰戦であることを感じさせない存在感が光った。
試合後のインタビューで池田は「意外と気持ちも体もスムーズにリラックスして試合に入れた。チームの組織としての守備など、やるべきことをやりながら、前線へのボールを出すなど、自分の持ち味も出せたと思います。久々にピッチに立ってプレーをすることができてよかった。初めてのホームの試合でしたし、サポーターの後押しや試合後の雰囲気を感じることができて、ようやくスタートラインに立てたと思います」と話した。
池田は、昨年の夏の移籍でFC町田ゼルビアから期限付き移籍で福岡に加入。しかし、移籍後初出場となった昨年8月のG大阪戦で負傷。手術とリハビリを経て、復帰を模索していた矢先の今年2月、再手術となり、再びリハビリ生活を余儀なくされる。さらに、2度目の手術の後、予後の洗浄手術などを受けており、合わせて3度の手術を受けたことを明かした。長いリハビリ期間中、思うように回復しない状態に不安を覚え、「引退」も考えていたという。そんな時期もチームメイトやスタッフが支えた。
「復帰まで時間がかかっちゃったんですけど、ようやくここに帰って来られて、支えてくれた人たちに感謝です。今日は実力で出たというより、監督がチャンスを与えてくれたと思っているので、シーズンも残り少なくなりましたが、チームメイトやスタッフが納得するプレーを積み上げて、自分が出場する意味というのを示していきたいと思っています」と池田。長いリハビリを経てピッチに戻った池田が、試合を振り返るなかで「楽しかった」と笑顔で語ったのが印象的だった。
【川添道子】








