11月25日、福岡市民ホールにおいて、工業デザイナー・水戸岡鋭治氏の公開講座が、福岡歴史観光市民大学の主催により開催された。水戸岡氏はJR九州の車両デザインを長年手掛け、その独創的な仕事で地域交通のイメージを大きく変えてきた人物である。今回の講座では、自身の歩みとデザイン観を軸に、旅や暮らしを豊かにするための考え方について語った。
水戸岡氏は、JR九州での初期の経験から現在に至るまで、多様な車両デザインに関わってきた経緯を紹介しつつ、デザインとは色やかたちにとどまらず「文化や生活を支える総合的な計画」であると強調した。創造の源泉として、幼少期の感動体験や時代の空気、依頼主からの刺激が大きいことも述べ、自身の発想がどのように育まれてきたかを語った。
講座では、JR九州が“どこにもないもの”を選び取り続けてきた姿勢に触れ、それが同社のブランドをかたちづくってきたと指摘した。木材やガラスを生かした空間設計や、良質な素材を用いることで利用者の行動が変わるといった事例も紹介され、会場には熱心に耳を傾ける聴講者の姿が見られた。こうした姿勢は単なるデザイン論にとどまらず、実務の厳しさと創造性を同時に語るものであり、現場を知らない立場でも大いに示唆を受けた。
現在、氏はJR北海道のローカル線再生プロジェクトに取り組んでおり、新たな挑戦に向けた決意も語られた。デザインの現場では、即断即決で最適解を探る「ライブ会議」が成果につながるとし、長年の経験に裏打ちされた持論を披露した。
終盤では、人生を豊かにするためには「学びを重ね、自らの好きと平和を見つけることが重要である」と述べ、講座を締めくくった。水戸岡氏のデザインをめぐる視野の広さと、仕事への真摯な姿勢が印象的だった。
福岡歴史観光市民大学
主 催:NPO法人福岡城・鴻臚館市民の会
後 援:福岡市・福岡市教育委員会・福岡商工会議所
TEL:092-716-8238
(月・水・金 午前10時~午後3時)
【和田佳子】








