NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、1月16日付の記事を紹介する。
新年早々、「資源小国」と揶揄されてきた日本にとって朗報がもたらされました。というのは、日本が「海洋資源大国」に変貌する可能性が出てきたからです。この1月12日、国内の希土類元素の新たな資源開発を目指し、1か月にわたる深海探査ミッションが始まりました。成功すれば、電気自動車、電子機器、防衛システムに使用される重要鉱物の確保方法が大きく変わる可能性があります。
日本の採掘試験船「ちきゅう」は静岡港を出発し、東京の南東約1,900キロに位置する遠隔サンゴ礁、南鳥島付近の海域に向かいました。このミッションは、これまでにない試みです。というのも、海面下6キロの深海から希土類元素を豊富に含む泥を、船体に直接連続的に採取するという世界初の試みですから。成功すれば、これほどの深度での希土類元素の持続的な深海からの回収は技術的にも戦略的にも大きな成果となり、世界の資源開発の歴史を塗り替えることになります。
日本のこうした取り組みは、中国が重要鉱物の輸出規制を強化している中で行われています。多くの西側諸国と同様、日本は世界のレアアース・サプライチェーンを支配する中国への依存度を下げる取り組みを進めてきました。高市首相の「台湾有事」発言を機に、両国間の外交・貿易摩擦が激化しているため、この取り組みの緊急性は高まる一方です。
「7年間の準備を経て、ついに世界初の試掘を開始できることになり、大変感慨深い思いです」と、政府も支援するプロジェクトの責任者である石井正一氏は興奮気味に話しています。さらに、「海面下6キロメートルからの鉱物回収は大きな挑戦であり、日本のレアアース調達の多様化に大きく貢献する可能性があります」と付け加えました。「ちきゅう」は約130人の乗組員と研究者を乗せ、2月14日には静岡に帰港する予定。是非とも、成功してほしいものです。
この探査は、「現代産業のビタミン」とも呼ばれるレアアース元素が高濃度で含まれると考えられている南鳥島付近の泥層に焦点を当てていますが、政府は慎重な姿勢を取っており、推定埋蔵量を公表していません。とはいえ、深海資源の開発技術を有する三井海洋開発や精錬技術を誇る住友金属鉱山など日本企業の出番も投資家の間では期待されています。
日本は現在、レアアース輸入の約60%を中国から調達していますが、これは2010年の約90%からは相当減少させています。東シナ海における海洋紛争を受けて中国が輸出を制限した際、対中依存度の高さが深刻な弱点となったからです。それ以来、日本は商社の双日と豪ライナス・レアアース社との提携などを通じて、海外のサプライチェーンに投資してきました。また、レアアースの使用量を削減するリサイクルや製造プロセスも加速させてきています。
いずれにせよ、今回のプロジェクトは日本が国内でのレアアース調達への道を切り開く本格的な試みとなります。日本が資源輸入国から脱皮できるチャンスにつながるからです。ただ、こうした新たな取り組みを重ねたとしても、中国が輸出規制をさらに強化すれば、日本が単独で資源を確保し、独自の製造業を継続発展させることは容易ではありません。
重希土類元素は日本にとって特に安定供給が欠かせない資源です。これらの資源は、電気自動車やハイブリッド車のモーターに使われる強力な磁石に不可欠であり、現在、日本への供給のほぼ全てが中国から供給されています。何らかの混乱が生じれば、日本の自動車産業やハイテク製造業に急速に波及する可能性があり、日本の産業界にとっては大きな弱点としか言いようがありません。
実際、中国政府はすでに規制強化に着手しています。先週、中国は民生・軍事両面に応用可能なデュアルユース品目の日本への輸出を禁止すると発表しました。この輸出禁止品目には、一部の重要鉱物が含まれている可能性があります。中国当局はより広範なレアアース規制を公式に発表していませんが、国営メディアは、その選択肢の拡大が検討されていると報じており、油断禁物です。
残念ながら、南鳥島の海底からの試掘の取り組みは、すぐに成果が出るとは限りません。日本は2018年以降、このプロジェクトに約400億円を投入してきましたが、埋蔵量の推定値や生産目標はいまだ確定できないままです。目前の試掘が成功すれば、次のステップは2027年2月に予定されている本格的な採掘過程の開始となるでしょう。世界が注目しているプロジェクトでもあり、日本政府も完ぺきを期して、慎重な対応を心がけているに違いありません。
著者:浜田和幸
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