京都府知事選の一大争点・北陸新幹線延伸問題に触れない西脇知事の姑息な争点隠し選挙
3月19日に告示された京都府知事選は、三選を目指す現職の西脇隆俊知事(自民、中道、国民民主、立民、公明推薦)に対して、藤井伸生・京都華頂大名誉教授(共産推薦)と日本自由党総裁の浜田聡・元参院議員の新人2人が挑む三つ巴の構図だが、与野党第一党など主要政党の推薦を受けた西脇氏が府民を舐めきった姑息な争点隠し選挙を展開している。「京都が危ない」「千年の愚行」との批判も出ている一大争点・北陸新幹線延伸について西脇氏は、第一声でまったく触れなかったのだ。
2人の新人候補とは対照的だった。京都市役所前で第一声を上げた藤井氏は、冒頭で「私は今回の知事選にあたって北陸新幹線京都延伸はいらない。軍拡の道もいらない。若狭湾の原発再稼働反対。この3つをやっていきたいということを考えて立候補しました」と切り出した。聴衆が立てていたプラカードの1つは「北陸新幹線の京都延伸ストップ」。京都延伸反対の地元民意に応える街頭演説をしていたのだ。
一方、浜田氏の第一声は日本海側の舞鶴市で、大票田の京都市内を選ばなかった。その理由の1つが北陸新幹線問題。京都市内に地下トンネルを掘る現行・小浜~京都ルートではなく、日本海側を通る地上代替案を以下のように提示したのだ。
「『(現行の)小浜~京都ルート』が白紙同然になったのであれば、国際港でもある舞鶴を新幹線と連携させ、舞鶴を中心に日本海側を繁栄させて国益につなげたい」
新人候補2人が小浜・京都ルート反対であるのに対して、現職の西脇氏は第一声では一言も語らず、16日の公開討論会でも計画自体を肯定的に捉えつつ、現行ルートへの賛否を明確にしなかった。「北陸新幹線は日本海国土軸の一部を形成して、大規模災害時には東海道新幹線の代替機能を果たす」「京都府域はもとより関西全体の発展につながる国家プロジェクト」と位置づけたうえで、「与党プロジェクトチーム(PT)の整備委員会の今後の検証を注視していく」としか語っていなかったのだ。
北陸新幹線は福井県敦賀市まで延伸されているが、敦賀以西のルートは未決定。自公連立時代の与党PTは、福井県小浜市から南下して京都市内の地下にトンネルを掘る「小浜~京都ルート」で進めようとしたが、地下水枯渇や残土問題(トンネル予定地に有害なヒ素が存在)や財政問題(総事業費5兆3,000億円のうち京都負担額が6,000億円)などへの懸念で地元の反発が強くなっていった。
昨年夏の参院選京都選挙区(定数2)では、現行ルート見直しを訴えた維新の新実彰平参院議員がトップ当選。京都延伸の急先鋒でトップ当選を続けてきた自民の西田昌司参院議員は2位に沈み、次点の延伸反対の共産現職にも迫られた。「北陸新幹線京都延伸ストップ」の民意が突きつけられたかたちとなったのだ。
これが方針変更をもたらした。現行ルート見直しの維新と自民が連立を組んだことから、与党PTの整備委員会は昨年12月、現行案に加えて米原ルートを含む8案を検討することになった。浜田氏が「『小浜~京都ルート』が白紙同然に」と第一声で指摘したのはこのためだ。
しかし先の衆院選では高市自民が圧勝し、維新の影響力は相対的に低下した。永田町の勢力図の変化によって「再び小浜~京都ルートが有力になるのではないか」との声が囁かれ始めたのだ。
そんななかで、京都府知事選に突入。当然、各候補の主張(立場)が有権者の判断材料になるのは間違いないが、西脇氏だけが北陸新幹線延伸問題を語らず、賛否も明らかにしていなかった。そこで3月19日、第一声の街宣を終えた西脇氏を直撃、延伸問題に触れない理由を聞いてみた。
――西脇さん、(第一声で)北陸新幹線に触れなかった理由は何か。
西脇氏 いやいやいや。
――(検討中の)与党案が小浜ルートになったらどうするのか。(地下水枯渇で)京都が危ないではないか。
西脇氏 いえいえいえ。
――何で触れないのか。京都(の地下水)が水枯れになるのではないか。重要な問題、一大争点ではないか。
西脇氏 無言(スタッフが間に入って接近を阻む取材妨害を開始)。
その後も、西脇陣営の争点隠し選挙と取材妨害は徹底していた。3月20日に金子恭之・国交大臣が西脇氏の応援演説をしたが、新幹線計画を所管する国交省の大臣なのに、北陸新幹線について一言も語らなかったのだ。その前に登場した京都延伸の急先鋒である西田氏も、国交省OBの西脇氏もスルーしたのだ。
金子大臣は警備が厳しく、直撃は断念したが、西田氏は演説会場の出口で待ち構えて、声掛け質問をした。しかし「北陸新幹線に触れなかった理由は何か。一大争点ではないか。何で触れないのか。金子大臣も触れないのはおかしいのではないか。争点隠しなのか」と問いただしたが、無言のまま車に乗り込んだ。
告示日と同様、この日も北陸新幹線問題に触れなかった西脇氏にも、再び同趣旨の質問をぶつけたが、ここでも一言も返答がなかった。
ラストサンデーの3月29日には、片山さつき財務大臣が応援に駆けつけたが、金子大臣の時と同じパターンだった。片山大臣も西脇氏も西田氏も、3人とも北陸新幹線延伸について語ることはなかったのだ。
酒作り・湯葉・豆腐などで知られる「水の都・京都」が、トンネル工事による地下水枯渇で大打撃を受けるのではないか。こんな懸念が払拭されていないのに、北陸新幹線京都延伸について語ろうとしない現職の西脇氏。「自民をはじめ主要政党推薦で楽勝」と高をくくっているのかもしれないが、京都延伸反対を明言する新人二候補がどこまで追い上げるのか否かが注目される。
【ジャーナリスト/横田一】








