【インタビュー】西九州新幹線、成長戦略、防衛、防災 佐賀の主要政策課題を問う

内閣府副大臣 衆議院議員 岩田和親 氏

 2026年2月、佐賀1区で6選をはたし、現在は内閣府副大臣として経済財政政策を担う岩田和親衆議院議員。その地元である佐賀県は今、交通インフラから防衛政策まで、国政と密接に関わる重要課題を複数抱えている。西九州新幹線の全線フル規格化構想、物価高対策と地域産業支援、安全保障政策、防災インフラ整備―いずれも地域の将来を左右する政策論点であり、県民の目線と国の戦略が交差する現場である。それらの課題について岩田和親議員に話を聞いた。

西九州新幹線と
地方負担の在り方

内閣府副大臣 衆議院議員 岩田和親 氏
内閣府副大臣 衆議院議員
岩田和親 氏

 ──佐賀駅ルートを現実化するにあたり、県や自治体の財政負担軽減や並行在来線の維持・利便性確保などについて、どのようなスキームを構想していますか。

 岩田和親氏(以下、岩田) 西九州新幹線については、九州全体の交通ネットワークを完成させるうえでも、また佐賀県の将来にとっても、全線フル規格化と佐賀駅ルートでの整備が最も合理的で持続可能なかたちだと考えています。時間短縮だけでなく、災害時の代替輸送や物流、観光・企業立地など、九州全体の発展にも大きな意味をもつ国家的プロジェクトです。

 一方で、佐賀県がこれまで示してこられた懸念、とくに財政負担や在来線への影響については、しっかり受け止める必要があります。私は、この問題は佐賀県に過度な負担を求めるかたちではなく、国がより主体的に責任をもつ仕組みを整えることで解決できると考えています。論点が整理されれば、必要に応じてスキームの見直しや特例的な財政措置を国に求めていくことも重要です。たとえば、県や自治体の負担に上限を設けるなど、佐賀県が安心して議論に参加できる環境を整えていくべきだと思います。

 また、長崎本線は通勤・通学など地域の生活を支える重要な路線です。新幹線整備と同時に、並行在来線の本数や接続、運賃などの利便性を確保する仕組みを国の制度として担保することも欠かせません。新幹線の整備によって地域に「光」と「影」をつくってはならず、地域交通の利便性をしっかり守ることが前提です。国交省事務次官と佐賀県知事が対話を重ねていることに期待しています。今こそ論点を整理して国に働きかける段階に進むべきでしょう。

 さらに、新幹線は単なる鉄道整備にとどまるだけでなく、道路、空港、港湾など交通ネットワーク全体のレベルアップと一体で進めることで、地域振興につなげていくことが重要です。たとえば福井駅周辺では、新幹線開業を契機に民間投資や都市機能の整備が進み、まちの活力につながっています。佐賀でも、新幹線を地域の成長につなげ、企業立地や観光、まちづくりを進めていく視点が大切だと思います。

 そのうえで何より大切なのは、佐賀県民の理解と合意です。これまでの経緯を踏まえれば、国や関係者がデータや条件を丁寧に示しながら、透明性のある議論を進めていくことが必要です。私は、佐賀にとっても将来の成長につながるかたちで、新幹線整備と地域交通の両方が前進する道を見出していきたいと考えています。

 西九州新幹線は、九州の未来の交通インフラをどうつくるかという大きなテーマです。佐賀の声を大切にしながら、九州全体の発展につながるかたちで前に進めていくことが重要だと思います。

物価高対策と「佐賀型成長戦略」

 ──農林水産業や中小企業支援をどのように成長戦略へ結びつけ、「補助」から「自立的成長」へ転換していく考えでしょうか。また、県民が「経済がよくなった」と実感できる政策成果を、どの時点で、どのような指標で示していく想定でしょうか。

 岩田 農林水産業や中小企業は、地域経済の基盤であると同時に、これからの日本の成長を支える重要な産業だと考えています。私は、これらの分野を単に「守る対象」として補助を続けるのではなく、稼ぐ力を高め、成長産業として発展させていくことが重要だと思っています。

 そのために1つ目に取り組むべきは、価格で正当に評価される仕組みをつくることです。農業や中小企業は、資材やエネルギー価格が上がっても十分に価格転嫁できない構造が長く続いてきました。しかし現在は、価格転嫁を後押しする法律も動き出しています。こうした制度をしっかり活用し、適正な価格形成や取引環境の改善を進め、努力や付加価値がきちんと所得に反映される仕組みを整え、結果を出していきたいと考えています。

 2つ目に、生産性と付加価値を高める投資を進めることです。農業ではスマート農業や土地の大区画化、輸出拡大などを進め、収益力を高めていく。中小企業についても、省人化やDX、設備投資を後押ししながら、新しい技術や市場への挑戦を支援していきます。補助金は単なる支えではなく、次の成長につながる投資を後押しする役割へと転換していくべきだと考えています。

 そして3つ目は、地域の成長分野と結びつけることです。半導体やデータセンター、物流、観光など、これから伸びていく産業と地域の中小企業や農業を結びつけることで、新しい需要と雇用を生み出していきたいと思います。私自身、経済産業副大臣などを歴任した経験もありますので、その経験やネットワークも生かしながら、半導体などの成長産業の投資や企業誘致を地域につなげていきたいと考えています。

 また、日本経済は国際情勢の影響も受けます。たとえばイランを含む中東情勢はエネルギー価格などを通じて日本経済にも影響を与える可能性がありますので、こうした動きを注視しながら、国内産業や地域経済への影響を抑えるための対策を政府として的確に打っていくことも重要です。

 県民の皆さまが「経済がよくなった」と実感できるかどうかは、やはり所得改善と雇用創出だと思います。たとえば、農業所得の増加、中小企業の賃上げ率、県内企業の設備投資額、そして地域の雇用の拡大など、具体的な数字で成果を示していくことが大切です。政策は実行して終わりではなく、こうした指標を継続的に確認しながら、地域の皆さまが実感できるかたちで成果を積み重ねていく必要があります。

 私は、農林水産業や中小企業が地域の誇りであり続けるだけでなく、地域の成長をけん引する産業として発展していくような経済政策を進めていきたいと考えています。その結果として、佐賀でも「仕事が増えた」「所得が伸びた」「若い人が戻ってきた」と感じてもらえる経済を実現していきたいと思います。

防衛力強化と佐賀県の役割

 ──防衛力強化を進めるなかで、佐賀県における自衛隊施設や関連インフラの役割をどのように位置付けていますか。また、防衛拠点化と地域経済振興、住民理解とのバランスをどのように図っていく考えでしょうか。

 岩田 我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増すなか、防衛力の強化は国の最も基本的な責任の1つだと考えています。私はこれまで防衛大臣政務官や自民党国防部会長を歴任してきましたが、その経験からも日本の安全保障を支える現実的な体制づくりの重要性を強く感じています。

 そのなかで佐賀県は、地理的にも九州北部の要衝に位置し、南西地域を含めた広域防衛や災害対応の拠点として重要な役割を担う地域だと認識しています。また、自衛隊の施設や関連インフラは、国土防衛だけでなく、大規模災害時の救援活動や物資輸送など、国民の命と暮らしを守る基盤として大きな意味をもっています。

 一方で、防衛力の強化を進めるにあたっては、地域社会との信頼関係が何より大切です。私は、国の安全保障に資する取り組みと、地域の安心や発展が両立するかたちで進めていくことが重要だと考えています。たとえば、自衛隊施設の整備や関連インフラの強化にあたっては、周辺地域の道路や港湾、物流機能などの整備を一体的に進めることで、地域の防災力や産業基盤の強化にもつなげていくことが必要です。

 また、防衛関連の施設や訓練が地域に与える影響については、丁寧な情報提供と対話を重ね、住民の皆さまの理解を得ながら進めていくことが欠かせません。安全対策や環境への配慮を徹底するとともに、地域振興策や生活環境の向上にもつなげていくことで、地域とともに歩む防衛拠点の在り方をつくっていくべきだと思います。

 さらに、防衛関連の取り組みは、地域経済にも一定の効果をもたらします。自衛隊施設の整備や維持管理、関連産業の集積などを通じて、雇用や産業の活性化につながる可能性もあります。私は、防衛と地域振興を対立するものとして捉えるのではなく、地域の安全と発展の両方に資するかたちで政策を進めていくことが大切だと考えています。

 佐賀県はこれまでも、国の安全保障や災害対応において重要な役割をはたしてきました。今後も地域の皆さまの理解と協力を大切にしながら、国の安全を守る拠点としての役割と、地域の発展を支える取り組みの両立を図っていきたいと考えています。

インフラ整備と
防災・減災の優先順位

 ──佐賀1区において、とくに優先すべき防災・減災インフラは何であると認識していますか。

 岩田 佐賀1区でとくに優先すべき防災・減災インフラは、私は大きく2つあると考えています。

 1つは、佐賀平野の命と暮らしを守る治水・内水対策です。佐賀は低平地が多く、ひとたび大雨が起きると、外水氾濫だけでなく内水被害も広がりやすい地域です。県も、近年の豪雨被害を踏まえ、治水対策や排水機場、河道掘削、ダム整備を国土強靱化の最重要課題として国に求めています。

 具体的には、城原川ダム、城原川の堤防強化、佐賀導水路のポンプ更新・耐震化、筑後川沿岸各地の排水対策、そして嘉瀬川・巨勢川周辺の排水機能強化を優先すべきだと思います。国の資料でも、城原川は計画高水位を超える洪水が発生しており、令和7年度は堤防拡幅を進めること、佐賀導水路では老朽化したポンプ施設の更新設計や耐震対策を進めることが示されています。城原川ダムについても、洪水調節を目的とする事業として令和7年度は本体関連・付替道路の調査設計や用地補償を進める段階に入っています。

 もう1つは、災害時に人と物資を止めない道路ネットワークです。大雨や地震のときに避難、救援、物流を支える「命をつなぐ道」は不可欠です。県も、有明海沿岸道路や佐賀唐津道路、国道34号の機能強化を、災害対応と地域成長の両面から重要だと位置付けています。佐賀市周辺では大川佐賀道路、佐賀道路、神埼佐賀拡幅などが進められており、これらは平時の渋滞対策だけでなく、非常時の代替路・救援路としての意味が大きいと考えています。

6期目への意気込み

 ──6期目の議員として、「謙虚な姿勢」と「実行力」をどのように両立させますか。国会活動、地元対話、政策形成プロセスにおいて、これまでと何を変え、何を強化していく考えでしょうか。

 岩田 6期目を迎えるにあたり、私が最も大切にしたいのは、初心を忘れない謙虚さと、結果を出す実行力を両立させることだと思っています。国政の場に長く身を置けば置くほど、地域の声を丁寧に聞き続ける姿勢と、その声を具体的な政策としてかたちにしていく力の両方が求められると感じています。

 まず、国会活動においては政策の実現力をさらに高めていきたいと考えています。私はこれまでも経済政策や産業政策に関わる分野に力を入れてきましたが、6期目では、政府の政策形成の段階からより深く関わり、地域の課題を国の政策に反映させていく役割を強化していきたいと思います。佐賀の農業や中小企業、防災インフラ、交通ネットワークなど、現場の課題を国の制度や予算に結びつけることが、国会議員としての大きな責任だと考えています。

 一方で、謙虚さという点では、地元との対話をさらに重視していきたいと思っています。政治は国会のなかだけで完結するものではなく、地域の皆さまとの対話のなかから課題が見えてくるものです。これまで以上に現場に足を運び、農業者や事業者、自治体の皆さま、若い世代の声も含めて幅広く意見をうかがいながら、政策に反映させていきたいと考えています。

 そして政策形成のプロセスでは、地域の声を政策の出発点にする仕組みをより強化したいと思っています。国の制度や予算はどうしても全国一律になりがちですが、地域ごとに事情は異なります。だからこそ、地元の課題を早い段階から国の議論に持ち込み、関係省庁や自治体と連携しながら解決策をつくっていくことが重要です。私はその“橋渡し役”をより一層はたしていきたいと思います。

 6期目は、経験を重ねたからこそできることも多い一方で、初心を忘れてはいけない時期でもあります。地域の声に謙虚に耳を傾けながら、政策としてかたちにし、結果を出していく。その積み重ねこそが、佐賀の皆さまの信頼に応える道だと考えています。これからも、佐賀の発展と日本の成長のために、責任をもって仕事をしていきたいと思います。

【内山義之】

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<プロフィール>
岩田和親
(いわた・かずちか)
1973年9月生まれ、佐賀県出身。96年九州大学法学部卒業。家業である(株)九州恵商会の代表取締役、経営コンサルタント大前研一氏事務所勤務などを経て、99年、佐賀県議会議員に初当選。3期務めた後、2012年12月、衆議院議員初当選。防衛政務官、経済産業副大臣、内閣府副大臣などを歴任。26年2月、小選挙区で勝利し6期目当選をはたす。現在、内閣府副大臣(金融・経済財政政策担当)を務める。

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