熊本・福岡の開発で存在感 合志では商業施設も

(株)南栄開発
代表取締役社長 深野政治 氏

(株)南栄開発 代表取締役社長 深野政治 氏

復興から再興、そして飛躍へ

 ──熊本地震(2016)から10年の節目を迎えます。

 深野 私は甚大な被害を受けた益城町の出身で、地震発生当時は実家が心配で通行止めの道を迂回しながら、数時間かけて車で熊本へ向かったことを覚えています。あれから10年、創造的復興を掲げた熊本の新たなインフラ整備、まちづくりは着実に進んでいます。当社では、災害発生時の備えとして食料備蓄をはじめ、通信手段のシステム化、データ管理のクラウド化など、BCPの策定・運用に取り組んでいます。

 ──まちづくりでいうと、TSMC進出の影響はやはり大きかったのでしょうか。

 深野 熊本にとってTSMC進出は成長機会であり、菊陽・大津エリアでは近年住宅やホテルの供給、工場や倉庫などの産業用地開発が活発化しています。関連サプライヤーの進出時期や、TSMC第2工場の建設スケジュールによるところもありますが、当社も同エリアで数カ所、開発用地供給に向けた準備を進めており、中長期的に国内外から投資を喚起できるような事業展開を考えています。

 人的往来も活発化するなか、益城町の先端技術産業集積地である熊本テクノ・リサーチパークでは、ランドマーク施設のリニューアルによるUXイノベーションハブの整備が進行中です。同計画は肥後キャピタル・西日本高速道路・玄海キャピタルマネジメント・当社の4社による出資、そして肥後銀行の融資によって実現しました。地域の活性化や課題解決とエリアマネジメントを目的に、本件プロジェクトマネージャーとして(株)グローカルブレインを設立しました。イノベーションと交流促進による賑わい創出を通じて、地域の産業・人材基盤の強化に貢献してまいります。

 ──将来への期待感が高まりますが、課題はありますか。

 深野 課題としては、地価の上昇に加えて、建設コストの増加もあり、開発のハードルが上がっていることが挙げられます。ホテル供給活発化の背景には、台湾との路線増便による観光客の増加のほか、先ほど述べたコスト増により、収益が見込める投資先が限られてきている現状があると考えています。

熊本・福岡で注目の開発案件

 ──昨年、商業施設・スプリングガーデン御代志(みよし)(以下、御代志)が開業しました。

 深野 合志市の土地区画整理事業へのまちづくり提案として始まったプロジェクトで、市が中央地区と位置付ける場所でまちづくりに寄与できる貴重な機会だと捉え、挑戦しました。商業施設の開発実績は、中心市街地でのCOCOSAがありますが、御代志規模の郊外型商業施設の開発は初であり、検討開始から足掛け6年を費やしました。プロジェクト全体のマネジメントから、テナント誘致まで自社で行ったことは、熊本のデベロッパーとしての認知度向上につながったと思います。

スプリングガーデン御代志
スプリングガーデン御代志

 ──福岡では宿泊施設のオープンが続きます。

 深野 一棟貸しタイプの彩(いろどり)ホテルを20棟ほど展開し、インバウンドの利用を中心に稼働も好調です。30~40坪の狭小地の対応に困っている不動産オーナーからご相談を受けるなかで、狭小地でホテルを成立させるノウハウを得て、今に至ります。昨年10月にはJR鳥栖駅前にあった既存ホテルを取得後リニューアルし、ホテル・クロスベース鳥栖駅前(客室数58室)としてオープンしました。今後はさまざまな宿泊ニーズに応えられるホテルを提案していければと考えています。もちろん、福岡でも住宅地から商業用地・産業用地の開発まで、幅広く事業拡大を図っていきます。

ホテルクロスベース鳥栖駅前  (左)外観パース (右)内観パース
ホテルクロスベース鳥栖駅前
(左)外観パース (右)内観パース

 ──最後に、今後の事業展開などについてお聞かせください。

 深野 創業オーナーから経営のバトンを引き継ぎ、現在100年企業を目指した組織運営へシフトすべく、意思決定や業務フローの見直しを進めています。業務を個ではなくチームで遂行する体制が浸透してきています。

 事業では住宅市場の将来を見据え、戸建分譲用地にとどまらず、事業用地や自社収益物件の開発にも注力し、幅広く不動産の価値創造に挑戦していきたいと考えています。熊本ではTSMC関連の需要に対応した工業用地や物流用地の商品化を手がけるほか、熊本市庁舎跡地やその周辺地域の再開発にも積極的に関わっていきたいと思います。単なる不動産開発ではなく、その地域に本当に必要なのは何かを考え、まちの未来を再構築する。そこに、私たち南栄開発の存在価値があると考えています。

【代源太朗】

本社外観
本社外観

<COMPANY INFORMATION>
代 表:深野政治
所在地:熊本市東区小峯3-1-18
設 立:1984年6月
資本金:8,000万円
URL:https://www.nan-ei.com/


<プロフィール>
深野政治
(ふかの・まさはる)
1969年生まれ。熊本県益城町出身。学卒後、西日本銀行(現・西日本シティ銀行)に入行し、その後2006年設立の独立系不動産投資会社、(株)玄海キャピタルマネジメントに参画。多彩な物件開発、不動産バリューアップに携わり、執行役員を経て18年に同社代表取締役副社長に就任し24年まで同職。25年6月より南栄開発の代表取締役社長に就任。

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