台湾の半導体産業の発展の歴史を描いたドキュメンタリー映画『造山者 世紀の賭け』(2025年、邦題:チップ・オデッセイ 台湾の賭け)の上映会が12日、熊本市の肥後銀行本店で開催された(主催:(一社)くま台湾Neo、(株)ON-do、共催:(一社)九州台湾商会、司会:樫山結氏)。本作は、台湾での興行成績がドキュメンタリー映画として歴代5位に入るほどの大ヒットを記録している。
監督の蕭菊貞氏は約5年の制作期間をかけ、80人以上の半導体産業の発展に関わった人たちに取材を実施。1970年代に半導体産業への大規模投資を決断した政府関係者や、当時アメリカに行き学習した若い研究者、エンジニアの証言を通じて、台湾が半導体製造拠点へと変貌を遂げる過程を描いている。
台湾に精通したジャーナリストの野嶋剛氏らが日本でも観てもらいたいと日本語への翻訳を行うとともに、日本での主催団体を探した。先月から今月にかけて、東京、名古屋でも上映されたが、九州では初めての上映となった。
上映後には野嶋氏の進行で蕭監督、TSMCを30年以上取材してきた台湾のジャーナリストの林宏文氏を交えてのトークショーが開催された。まず野嶋氏から、熊本での上映会開催について、TSMCという巨大な存在が進出してきた同地において期待と不安が入り混じるなか、「まず知ること」が最も重要であると考えたことが上映会開催の動機であったとの説明がなされた。
蕭監督が強調したのは、映画が単なるテクノロジーの記録ではなく、そこに携わった人々の信念や勇気を描いた物語であるということだ。台湾で多くの人が映画を見て涙を流したというが、それは彼らの失敗や苦労も含めて描かれているからだろう。
林氏はTSMCがアジアのなかで熊本を選んだ理由について、TSMCの基本哲学は「お客様の問題解決」であり、主要顧客であるソニーなどのニーズに応えることが進出の大きな動機だったのではと話した。また、聴衆からの地域社会との共生についての問いに対し、TSMCはもっと情報発信や相互理解の促進において行えることがあるとし、熊本の住民に対しても、コミュニケーションを深めてほしいと述べた。
福岡などほかの地域での上映が行われることを期待したい。
【茅野雅弘】








