2024年12月19日( 木 )

韓国経済ウォッチ~遅れている韓国の金融産業(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 韓国の金融産業は、規模や建物の外見、役員および社員の報酬額などで判断する限りでは、とても立派なものである。韓国の大手金融持ち株会社の世界ランキングは60位くらいであり、大手金融機関の建物は一様に大型ビルで、一等地に構えている。オフィスの内部は、夏は涼しく冬は暖かい快適な環境である。メガバンクの頭取の年俸は30億ウォンほどで、日本のメガバンクの頭取よりも2~3倍多い。
 だが、韓国の金融産業をもう少し覗いてみると、実はとても遅れていて、韓国経済にそれほど寄与もしていない。毎年、国家の競争力ランキングの発表があるが、その際にいつも韓国の金融分野の後進性が指摘されている。
 それでは、韓国の金融産業のどのような点が問題なのか、取り上げてみよう。

korea1 1つ目に、韓国の金融機関は、金融の基本機能である資金の融通機能を十分に果たしていない。たとえば、資金が切実に必要な零細事業者や創業者、信用の低い人の場合、大抵担保を持っていないことが多いため、金融機関からお金を借りられない。当然の結果として、韓国では零細事業者または創業者が、事業を起こしたり、事業を拡大したりするのは、とても難しい。それだけでなく、このような人たちは高利貸しに頼らざるを得なくなり、被害に遭う事例も続出している。その反面、公務員、医者などの専門職、大手企業の社員などに対しては、金融機関はいろいろな融資制度を用意し、選択するのが難しいほどである。
 このように金融機関利用にも、両極化現象が起こっている。アメリカにはベンチャーキャピタルが発達していて、事業のアイデアだけでいくらで資金調達ができるし、ドイツにも金利をもう少し負担するだけで低所得者も利用できる協同組合銀行が存在するが、韓国にはそのような金融機関がないのが現状だ。

 2つ目に、電子、自動車、造船などは世界的な競争力を持っていて韓国経済に貢献している反面、韓国の金融産業は残念ながら世界的な競争力を備えていない。韓国を代表する国民銀行、新韓銀行は、国内では知名度があっても、世界的には影の薄い存在である。サムスン生命の場合、世界ランキングは15位であるが、世界保険市場ではこれといった活躍は何もしていない。韓国の証券会社も株式の仲介業務、ファンドの販売をやっているだけで、韓国企業が海外で巨額の投資、合弁事業、工事の受注、M&Aをやるときは、ほとんど外資系の投資銀行に仕事を取られている。
 2008年の世界金融危機の際にも、韓国の金融機関は資金調達を行う役割を十分果たしていない。その理由は、世界的な金融機関はすでに国際化されているが、韓国の金融機関は国際化がされていないからである。従って、海外から資金を調達するときも預金、債権の発行、金融機関同士の借入、中央銀行からの借入など多様な方法がある。しかし、韓国の金融機関は現地化もほとんどできていないため、海外で資金調達をしようとなると、本店支援か現地の金融機関からの借入しかできない。すなわち、金融機関として国際業務が遂行できる状況ではないということだ。

 3つ目に、韓国の金融産業は雇用効果も小さい。韓国で金融機関に従事する人の数は20万人ほどであるが、ドイツは70万人ほどである。人口を考慮しても、ドイツは韓国より2倍くらいの雇用効果を持っていることになる。ドイツは製造強国でもあると同時に、ドイツ銀行のような世界的な金融機関も保有しているし、協同組合銀行のような多様な金融機関が発達している。

 以上で見てきたように、韓国の金融産業は、世界的な競争力がないだけでなく、韓国の発展にあまり寄与していない。もし金融産業がしっかり独自の役割を果たしていたら、雇用の確保だけでなく、韓国経済ももっと成長ができたであろうことは、容易に想像できる。

(つづく)

 
(後)

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