NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
今回は8月12日の記事を紹介する。
2001年のEU議会で問題視された国際スパイ情報システムEchelon(エシュロン=梯子を意味する隠語)とは地球規模の通信傍受システムのことで、参加5カ国から別名「ファイブ・アイズ」(5つの目)とも呼ばれる。NSA(米国家安全保障局)を中心に英国、豪州、ニュージーランド、カナダが参加するエシュロンはアングロサクソン5カ国の情報担当部局が地域を分担し、世界中の音声通信、ファクシミリ、電子メールをスパイ衛星で傍受、分析、活用している諜報システムのことである。
ファイブ・アイズは市民のプライバシーの侵害、私的通信傍受、盗聴という人権上の深刻な事態も引き起こしている。高市早苗首相が鳴り物入りで7月31日に創設した日本の「国家情報局」も個人の情報収集に際しては人権侵害などを引き起こすことのないように十分な配慮と国民の監視が必要なことを強調したい。あわせて国境を越えたグローバルな諜報活動については日本もEUと協力し、世界的な議論にもっていくべきだ。
エシュロン傍受の疑いのある盗聴基地は世界中に20カ所あり、アジアではグアム、香港(1994年に廃止されたという)、ニュージーランド、オーストラリア(3カ所)に加え、青森県の米軍三沢基地が有力な傍受基地として含まれている(三沢傍受基地は閉鎖されたともいわれるが真偽のほどは不明だ)。
これら傍受システムは宇宙に打ち上げられたスパイ衛星で24時間、盗聴、監視に活用されていることを認識する必要がある。
EU議会の報告書では具体的な例として、90年代に国際ビジネス分野で主要な28の傍受、盗聴例を取り上げ、注意を喚起している。(同報告書82~92ページ)
日本関係では96年に米国製乗用車の対日クオータ交渉に際し、CIAが当時の通産省のコンピューターシステムに侵入し、情報を当時の米通商代表ミッキー・カンターに渡したケースなど、米国が情報を不正に入手したというダンカン・キャンベル氏の調査結果を公表している。(『知識情報戦略』石川昭・中川十郎編著、税務経理協会、25ページ参照)
かつて日本がこのアングロサクソンのスパイ組織「ファイブ・アイズ」に参加をめぐって交渉したことがあり、2020年当時の英ジョンソン政権は日本を加えることに前向きな発言をしていたようだが、「ファイブ・アイズ参加に固執するな」と英国秘密情報部(MI6)前長官のリチャード・ムーア氏が日経紙上のインタビューで発言しているのは興味深いことだ(日経、26年8月9日朝刊)。いずれにしても諜報分野で大幅に出遅れた日本は情報収集に際しては人権問題に留意し、公平で慎重な情報収集を心がけることを強く求める次第である。
<プロフィール>
中川十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)。









