2024年12月24日( 火 )

トヨタ4年連続世界首位も、熱を帯びない国内市場

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トヨタ、2年連続1,000万台超え

toyota トヨタ自動車は27日、2015年の世界販売台数が1,015万台(ダイハツ工業、日野自動車含む)であったことを発表した。これにより、トヨタの4年連続となる世界販売台数首位が確定したことになる。2位はドイツのフォルクスワーゲンで993万台、3位はアメリカのゼネラル・モーターズの984万台と続く。トヨタはハイブリッド車プリウスやアクアといった省エネ性能の高い車種が業績を牽引し、連続首位の座を確定させた。また、2位フォルクスワーゲンの不祥事による販売減少も追い風となったと考えられる。
 2年連続しての1,000万台突破は快挙ではあるが、1,015万台という数字自体は2014年に比べると0.8%減っている。世界的に自動車離れが進んでいるうえに、トヨタのおひざ元、日本の自動車市場が冷えつつあるからだ。

前年比1割減の国内新車販売台数

 2015年1月から12月までの日本国内新車販売台数は504万台。14年の556万台から9.3%の下落となる。うち、登録車(トラクターやクレーン含む)は315万台で4.2%の下落、軽自動車に至っては189万台で16.6%の下落となった。14年は消費税が8%に上がる直前の駆け込み需要もあり、13年比で登録車は0.8%増となる329万台、軽自動車は7.6%増となる211万台の新車が販売された。15年はその反動からか、大きく下落することとなったのである。15年後半からは、さらなる消費増税による駆け込み需要が期待されたものの、結果として4年ぶりに前年比割れを起こすこととなった。ちなみに11年は東日本大震災の発生や、タイの洪水による部品調達遅延発生などにより、販売台数が低下した。

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市場活性化のカギは若者がにぎる

 自動車市場の縮小は若者の自動車離れが原因の1つと一般的には言われているが、その病巣は複雑だ。なぜ若者が自動車に乗れないのか。そこには雇用形態の多様化による将来不安、低い収入など金銭的な要素とともに、都市部のバス、電車などの社会交通インフラの充実により自動車を持つ必要性が少なくなってきていることも影響している。働く場のある都市部には若者が集まる。若者は都市部の充実した交通インフラで満足して、自動車以外のものに財をまわしているのである。若者は自動車から離れていき、市場の拡大を容易ならざるものとしているのだ。

 移動手段ならほかにもあるから、自動車を持つ必要はない。それも一理である。だが、自動車は移動手段に過ぎないのか。自動車愛好家からすれば断固としてNOと言いたいところである。移動手段としてだけの視点で見るならば、自動車を持つ必要性は薄くなってきているのかもしれない。しかし、運転する楽しさ、所有する喜びは何物にも代えがたいものがある。壊れそうな古い車を修理しながら乗っている筆者は、優秀な移動手段としてのエコ性能ばかりを前面に打ち出し、この楽しさを伝えきれていないことが自動車市場冷え込みの影の原因でないかと感じている。

 トヨタはFUN TO DRIVE,AGAIN.を掲げ、自動車の楽しさを伝えることに力を入れている。移動の手段だけではなく、楽しさをどこまで周知できるかが、若者を再び自動車に目を向けさせるためのキーワードと考えているのだ。魅力を知らない若者に楽しさを伝え、自動車を持つ喜びを知ってもらう。そして、これまで自動車に興味がなかった若者を取り込むことは市場のパイを広げることにつながる。自動車市場の浮沈は、今はまだ自動車に興味がない若者を取り込めるか否かにかかっている。

【柳 茂嘉】

 

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