広く売るな、狭く勝て 中小企業の「地域一番」戦略

 事業は、基本的には絞ったほうが強いと思っています。とくに人もお金も時間も限られている中小企業が、最初から「あれもこれも」と狙うべきではありません。私はランチェスター戦略の考え方が好きなのですが、その基本の1つが、市場を細かく分け、勝てる場所に経営資源を集中することです。

 商品を絞る。客層を絞る。業種を絞る。そして、地域を絞る。店舗や不動産のビジネスでは、とくにこの「地域」が重要だと思っています。飲食店なら、まずは店舗から半径1km、最寄り駅周辺、特定の住宅地などに絞る。

 不動産も同じです。建売住宅なら、物件周辺でどれだけ存在感を出せるか。賃貸管理会社なら、特定地域のオーナーさんから「あの会社はよく見るな」と思ってもらえるか。実際、不動産の広告では「商圏」という考え方が非常に重要です。物件や店舗を中心に、駅、道路、住宅地、生活動線などを見ながら、どこまでを狙うのかを決める。ここを決めずに広告を打つと、予算が薄く広く散ってしまいます。

 100万円の予算を10地域に10万円ずつ使うのか。1地域に100万円を集中するのか。どちらがその地域で存在感を出せるかと考えると、わかりやすいですよね。全国で少し知られている会社より、狭い商圏で最初に思い出される会社のほうが強いケースは多いと思います。私たちエンドラインも、スポーツ市場へ参入した際、最初から野球、サッカー、バスケット、学生スポーツまで全部を狙ったわけではありません。まずはBリーグに絞りました。1つの市場に集中して実績を増やし、取引先が増えると、そこから少しずつ他競技や学校スポーツへ仕事が広がっていきました。

 つまり、最初から広げたのではなく、1点を深く掘った結果、横に広がったのです。まず「Instagramを始めよう」「TikTokをやろう」「動画を週3本投稿しよう」ではなく、誰に売るのか、どの地域で勝つのか、何で一番になるのかをSNSをやる前に決めなければいけません。「福岡市のお客さまを増やしたい」では、まだ少し広い。「まずこの駅周辺」「まずこの住宅地」「まずこの商店街」くらいまで絞ってもいいと思います。SNSの投稿内容を考える前に、一度地図を広げてみる。そして、「自社は、まずどこで一番になるのか?」を考えてみる。広く知られる前に、狭く深く知られる。中小企業にとって、これは今でも非常に強いマーケティング戦略だと思っています。


<プロフィール>
山本啓一

(やまもと・けいいち)
1973年生まれ。大学に5年在学し中退。フリーターを1年経験後、福岡で2年ほど芸人生活を送る。漫才・コントを学び舞台や数回テレビに出るがまったく売れずに引退。27歳で初就職し、過酷な飛び込み営業を経験。努力の末、入社3年後には社内トップとなる売上高1億円を達成。2004年、31歳でエンドライン(株)を創業。わずか2年半で年商1億2,000万円の会社に成長させる。「エッジの効いたアナログ販促」と「成果が見えるメディアサービス」でリアル店舗をモリアゲる「モリアゲアドバイザー」として、福岡を中心として全国にサービス展開中。

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