2024年12月22日( 日 )

美しい街並みをつくり出す新たな時代の地域工務店となる(後)

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(株)安成工務店 代表取締役 安成 信次 氏

 創業65周年を迎えた(株)安成工務店。同社は創業以来、下関の地を中心に、一貫して地域に根ざした工務店として、街づくりに多大な貢献をもたらし今日に至る。同社は注文住宅とさまざまな建築物を設計施工で供給するという珍しい業態を持つ。すべては「健康で快適、且つ安全な暮らし」を原点に、事業をつくり上げている。今後の激動する業界において、同社はどのような経営を構築していくのか。同社代表の安成信次氏に話を聞いた。

(聞き手:弊社代表・児玉 直)

新・建設業に向けて

 ──建築事業の分野の展開についてお聞かせください。


 安成
 当社の建築部門の特徴は設計施工が9割を占めることです。厳密に言うと、企画・設計・施工です。30数年前から設計施工体制を志向し、1992年に初の自社商品であるRC賃貸マンション「リバティハウス」をリリースしました。それ以来、戸建借家ユニキューブ(unicube)、商業施設、医療施設の集合体である医療コートなどを得意分野として手がけています。最近では、設計コンペで私たちが提案した案を採用いただくケースもあります。なぜ、企画・開発・設計・施工方式を選択したかというと、1社ですべてを行うほうが、クライアントの要望に沿った、より良い計画が、よりコストダウンしたかたちで提供できるからです。ただしそのためには、独立した設計事務所と同等かそれ以上の設計力が必要なことは言うまでもありません。
yasunari2 現在、安成工務店では社員の約20%にあたる約30名が設計に携わる社員です。30名の所員を擁し年間75億円近い建物を設計する設計事務所は、なかなかいないと思います。
 住宅や一般建築の省エネルギー化についても特徴を持っています。関連会社のデコスが新聞紙をリサイクルした、セルロースファイバー断熱材「デコスドライ工法」の製造および施工供給を行っています。小規模ながらも断熱材メーカーをグループに擁するわけで、このため建物の高断熱化に対してはポリシーを持っています。注文住宅では今年からZEHを標準対応し始めましたし、医療や介護施設や事務所などの木造や鉄骨の低層建物には、このデコスドライ工法で省エネルギーな建築を提案しています。
 実際、光熱費が抑えられるとか夏涼しく冬暖かいなど、高い顧客満足をいただいています。

 ──人口減少にともない、我が国の空き家問題がクローズアップされています。新築の着工も必要ですが、ストック型社会の構築も必要です。その対応については、どのようなお考えをお持ちでしょうか。

 安成 この空き家の増加への対応は、国と我々建設・不動産業に携わる企業が真摯に取り組んでいくことが大切です。まず重要な問題は、「住み替えがスムーズに進むか?」ということです。日本では中古住宅の価値を高めるための公的な措置も、住まい手の努力もされてきませんでした。これを欧米並みに「高付加価値中古住宅」につくり上げるには、躯体の価値水準を高めることがとても重要です。基礎や構造は良しとしても、サッシや断熱材をゼロエネ住宅並みにつくり替えなければなりません。しかし、現在の中古住宅の流通はそこまで手が回らず、お化粧直しや設備一新で済ますことがほとんどです。どこかで誰かがそれを成し遂げなければ、価値のある中古住宅流通は生まれないと思います。これは我々工務店の仕事だと思います。
 それと人口減少社会を迎え、地方都市のコンパクト化・再構築が必要となります。高度成長の時代は戦後の古い環境をつくり替える原動力を地方自治体が行いました。しかし、これからはそうはいきません。私たち安成工務店グループが企画・開発・設計・施工型の建設業を目指す理由の1つに、この街づくりを主導して担うという大きな目標があります。これから何年かかるか解りませんが、地方都市の再構築をお手伝いできる建設業になりたいのです。

 ──安成代表が掲げる新・建設業を目指すために、優秀な人材が必要ですね。

 安成 チームワークが要求されるのが当社の仕事です。そして高いリーダーシップが求められます。当社の定着率は高く、入社するとほとんど離職しません。毎期6~8名前後の新卒を採用しております。今の当社の人材の育成強化をするために、幹部研修を強化していきます。大工職人の育成もテーマです。一昨年前から大工育成を始めました。現在3名ですが、今年は2名増えます。

 ──貴社の高い志と理念で、新たな建設業の姿をつくっていただくことを期待しております。

(了)
【文・構成:河原 清明】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:安成 信次
所在地:山口県下関市綾羅木新町3-7-1
創 業:1951年1月
資本金:7,200万円
売上高:(14/12)82億1,136万円

<プロフィール>
yasunari安成 信次(やすなり・しんじ)
1956年、山口県豊浦郡豊北町(現・下関市豊北町)に生まれ。77年日本大学生産工学部建築工学科を卒業後、大手建設会社勤務を経て、81年安成工務店入社。88年より同社代表取締役。NPO環境共棲住宅・地球の会理事長、日本セルロースファイバー断熱施工協会会長など要職に就く。

 
(前)

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