2024年11月23日( 土 )

投資が進み都市の魅力が増すなか、問われる地域間格差の是正

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(株)第一鑑定リサーチ 代表取締役 吉田 稔

建物付き物件は値上がりしています

 私は、定年後に不動産業を営んだ父親の影響で、1986年から不動産鑑定士の道を歩んでいます。95年3月に当社を設立してからは、福岡の都市開発、まちづくりに見る発展や景況感を、その変動要因を認識しながら冷静かつ客観的に分析してきました。
 バブル崩壊後も、福岡は交通インフラの整備や民間の大規模開発が進み、「全国一元気な街」と言われました。2008年のリーマン・ショックで一旦土地価格は下落したものの、現在は急速に回復しています。

fukuoka 人口は150万人を突破し、今後20年は発展するとの見方から、都心部には新たな投資が集中しています。JR博多シティおよび九州新幹線の全面開業から4年経過しましたが、民間の開発意欲は益々旺盛です。土地価格の上昇が見込めるのは一等地が中心ですが、天神と博多駅前では価格はまだ2:1と開きがあります。ただ、建設費が高騰していますから、更地より収益物件である建物付きの土地の方が値上がりしています。新規開発や投資は、3~4年先にどうなるのか、さまざまなリスクを意識する時期にきているようです。
 大名にオフィスを構えて20年が経ち、まちも大きく変わりました。初めは良い雰囲気を持っていましたが、お店の入れ替わりが激しく、ここに来て一気に開発が進んだ反動も出ています。ビルの開発にコストがかかっているので、家賃を高くせざるを得ないのでしょうが、不動産のオーナーには時間をかけてテナントを育てる気持ちも必要です。

少子化や過疎化は最優先の課題です

 土地や建物が流通した方が不動産鑑定士にとって仕事上のメリットにはなります。ただ、必ずしも流通量に仕事量が比例するわけではありません。売り買いのタイミング、証券化、法規制や税務上の問題、役員会での意思決定、会計上の減損処理、財務の健全化、相続や訴訟などいろいろな条件で、不動産の時価の把握や見直しが顕在化します。そこで不動産鑑定士が、的確なアドバイスができるかどうかが肝要です。

 福岡は、都心に近い空港、整備された港湾、地下鉄などの交通インフラの充実、人口の増加、国際会議の開催数全国2位、外国人観光客の増加などを背景に、投資先としては東京に次ぐポテンシャルを持っていますので評価業務は多くなります。
 華やかな都市部への投資が集中するなか、私が懸念するのは福岡を含め、大都市一極集中による他都市との格差です。さらに少子化や過疎化は、早急に取り組むべき課題と思います。そのためには、トヨタ自動車九州のような大手企業の子会社をどんどんつくり、地方に雇用を増やし活力が湧き出るような施策や努力が大切です。またJR九州が進める農業ビジネスが大きく成長すれば、新たな産業の芽を育むと思います。地域に雇用が増えると、ふるさとは歴史、人、知恵により必ず再生されます。
 不動産投資は都市部のみならず、地域振興にも有益でなければ、つまり国土の均衡ある発展があって初めて持続的な投資が可能になると思います。福岡には不動産価値を高めながら、創造性の高いまちづくりが求められています。(談)

※記事内容は2015年8月31日時点のもの

<COMPANY INFORMATION>
(株)第一鑑定リサーチ
代 表:吉田 稔
所在地:福岡市中央区大名2-2-50
    大名DTビル6F
設 立:1995年3月
資本金:1,000万円 
TEL:092-724-6566
URL:http://www.daiichikantei.co.jp/

<プロフィール>
yosidam_pr吉田 稔(よしだ みのる)
長崎県島原市出身。1981年3月、慶応義塾大学経済学部卒業。父親が定年後に不動産業を営んだことから86年2月、不動産鑑定士登録。95年3月、㈱第一鑑定リサーチを設立。母の言葉「真っすぐに生きなさい」を自らの指針とする。

 

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