2024年11月22日( 金 )

増加する労使トラブルへ「予防策」を

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徳永労務管理事務所 特定社会保険労務士 徳永 明日香

問題社員から会社を守る

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徳永労務管理事務所 徳永 明日香 特定社会保険労務士

 「特定社会保険労務士とはいったい何をする人なのか、まだあまり知られていないように感じます」と徳永明日香氏は言う。昨今急増している解雇問題、賃金未払い、パワハラ、セクハラなどのハラスメント―特定社会保険労務士は、そういった労使間に起きるトラブルについて、ADR(裁判外紛争解決手続)における代理業務を手がけることができる社会保険労務士である。労働関連法令に基づく就業規則や雇用契約書等の作成・改定、労務管理に関する相談・指導や社会保険諸法令に基づく手続き代行業務などといった労務士の一般的な業務に加え、個別労働関係紛争を円満な解決へと導くサポートを手がける。

 「注意すべき点は、労使トラブルとは何も使用者側など上の立場にある人間が問題であるとは限らないことです」と徳永氏は指摘する。最近では、学生が飲食店のアルバイト中に悪ふざけをしている写真をSNSにアップし、それが拡散して店の評判が落ち倒産に至るといったケースが頻発した。そうした「問題社員」などのトラブルから会社を守る必要性が高くなっている。

「よく聞く」ことで問題発見へ

 労務や人事に関わるため、経営者だけでなく男性、女性問わず従業員から相談を聞く機会は多く、話題は家庭の事情などプライベートな領域にもわたることがある。問題の解決は何が問題なのかを発見することから始まるのであり、「よい聞き手」であることが重要な要素となってくる。徳永氏は「話しやすい雰囲気をつくるだけでなく、話を聞くなかでさまざまな角度から質問を投げかけ、その人の悩みや困りごと、問題点を見つける」ことを得手としている。

労使トラブルの予防意識の向上を

 非正規雇用が増加し、労働力人口が減少するなか、雇用の多様化が進むなど、制度も法律も複雑化してきており、「経営者にとって労務管理が難しい時代になった」と徳永氏は述べる。「例えば、労働基準法は肉体労働が主だった時代につくられたものであり、必ずしも労働時間と成果が比例するわけではない。ホワイトカラーが中心になってきた今の時代にはそぐわないのです。それが如実に表れてくるのが残業です。そもそも業務量過剰で発生しているものなのか、あるいは単に労働者側の力量の問題なのか区別しにくい。極端に言えば、ぼーっとしていたり、自分の失敗で遅くなった場合でも残業代がもらえる。そういった残業の実情、時間と成果の間にはギャップがあります」。

 「企業は人」とよく聞かれるが、労使トラブルを経験した経営者はこの言葉により深い感嘆を込める。「労働者が何か事件・事故を起こしたとき、企業は一瞬でつぶれてしまう可能性があります。業界を問わず人手不足が進行するなかで、選択の余地なく採用する機会が増えていくでしょう。しかし、一度雇った以上は簡単に解雇するわけにはいきません。ですから、トラブルの発生を見据えた準備が必要になってくるのですが、いまだ多くの経営者の方が労務管理面についておろそかになりがちなようです。営業や利益に主に目が向けられ、『企業は人』と言いつつも後回しにされています。実際に労使トラブルが発生し、時間やお金、モチベーションといったものを失うリスクを見過ごしていたことに気がつく方が多いように感じます。トラブルのないうちに社内のルールを整備し、労使間でしっかりルールの確認を行って、働きやすい職場をつくることが肝要です。どのような人材を採用し育てたいのか、どのような組織にしたいのか。経営戦略の重要な要素として人事労務管理を考えていただきたいと思います」。

※記事内容は2015年8月31日時点のもの

<INFORMATION>
徳永労務管理事務所
所在地:福岡市早良区有田1-25-11
TEL:092-843-7956

<プロフィール>
tokunaga_pr徳永 明日香(とくなが あすか)
福岡大学大学院 法律研究科民刑事法専攻(労働法研究室)博士課程前期修了。2000年、社会保険労務士登録。07年、特定社会保険労務士付記。労働法務・人事労務管理の相談指導、個別労働紛争の防止・解決、就業規則・社内規程作成、労働社会保険手続・調査立会等。また、大学や短大にて労務管理や社会保障の講師も務める。

 

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