2024年12月23日( 月 )

30センチものさしではなくメジャーで夢のあるまちづくりを

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(株)エフ・ジェイ ホテルズ 代表取締役会長 榎本 重孝

「若者が夢を感じられるような社会」を後世に

 「人と地域を幸せにする」という人生哲学で、福岡経済界の発展に寄与してきた榎本重孝氏。南米ブラジルで土地開発事業に携わり、14年間現地の人々と生活をともにした経験を持つ。先だってプライベートで訪れたイギリスで、南米に比べるとイギリスの若者に覇気がないのが気になった。大都会で、経済的には豊かであるはずのまちなのに、である。

 ブラジルは経済後進国ではあったが、子どもたちの未来を、そして自国の伸び代を信じられるだけの情熱がある国だった。その様を見て、「幸福とは決して経済的繁栄のなかにのみあるわけではない」と実感したものだった。

地域経済活性化の仕組みづくりを

(株)エフ・ジェイ ホテルズ 榎本 重孝 代表取締役会長<

(株)エフ・ジェイ ホテルズ 榎本 重孝 代表取締役会長

 日本にも、そして福岡市にも、若者が夢を見ることができない時代が訪れるかもしれない。

 榎本会長はアベノミクスについて、「第3の矢は放たれないだろう」と考えている。第3の矢といえば、大胆な金融政策、機動的な財政政策に続く「民間投資を喚起する成長戦略」であることは周知の通りだ。たしかに第1、2の矢によって「デフレ脱却」「景気回復」は果たしたかもしれないが、今後、第3の矢における成長戦略には欠かせない若者の新規雇用先の開拓と、若き労働力の育成は難航するとみている。少子化による人口減少を見れば、人材として育てる対象数が圧倒的に少ないのがわかる。とくに地方の状態は深刻だ。就労年齢の人間が流出していく現象を見れば、多くの地域で雇用の場が激減していくのが目に見える。

 日本は都心に人口が集中している。しかし、日本には都心以外の土地にも人々の暮らしがあり、文化が継承されている。これらの貴重な財産を失ったり、途絶えさせてはいけない。ブラジルの片田舎も、人が生き生きと暮らすがゆえに魅力があった。住民が醸し出す魅力を無視し、経済が活発でない地を無価値な土地と見做し置き去りにしていくのは、大きな損失ではないだろうか。

未来はものさしでなくメジャーで計る

 昨今、日本中の宿泊施設が、外国人観光客の予約で数カ月先まで埋まっている。福岡市内のホテルも例外ではない。この大人数の海外観光客が過疎地の魅力を知り、現地を訪ねるようになれば、地域経済も活性化し、雇用の機会も生まれるのではないか、というのが、昨今の榎本会長の考えだ。さらに先を望むなら、日本の地方に魅力を感じた海外の人たちがいずれ住民として定住してくれるようになれば、人口も増え、コミュニティも機能するようになるのではないか。たとえば、海外の若者が高齢者の生活を支える仕組みもできるかもしれない。

 「インバウンドには、地域経済が活性化する良い仕組みができる可能性があります」と榎本会長。そして「文化や社会の価値を計るのであれば30cmものさしではなく、メジャーを使わなくてはいけません」と提言する。文字通り大きなスケールで物事を考えるべきだというのだが、とくに心に留めておきたいのは「長いメジャーは1人では計れない」という点だ。30cmものさしであれば1人で計れるが、見えるのは手元だけ。だがメジャーは正しく長く計ろうとすればするほど、多くの人々の協力が要る。

 未来を考えるのに1人で悩んでいてはいけない。多くの人々と協力し合い、手をつなぎあうことが必要だ。その一員になることは、都心部に住む者、福岡市に住む者にも十分可能だ。

※記事内容は2015年8月31日時点のもの

<COMPANY INFORMATION>
(株)エフ・ジェイ ホテルズ
代 表:榎本 重孝(会長)
    藤木 辰正(社長)
所在地:福岡市博多区博多駅東2-14-1
設 立:1978年3月
資本金:9,950万円
TEL:092-473-7117
URL:http://www.fj-hotels.jp

<プロフィール>
enomoto_pr榎本 重孝(えのもと しげたか)
(株)エフ・ジェイ ホテルズ代表取締役会長、福岡地所取締役特別顧問、福岡商工会議所の副会頭。祖父・四島一二三氏(福岡相互銀行創設者)の言動から多くを学び、人生哲学を得た。

 

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