「食」で元気を与えて20年、西中洲「博多なゝ草」が3月末に閉店
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大勢の人が行き交う歓楽街・中洲を川向こうにし、料亭やレストラン、小洒落たバーや家庭的なスナックなどが立ち並ぶ西中洲。名のある高級クラブや料亭が姿を消す一方で、意趣を凝らした新店の出店も続いており、落ち着いた雰囲気で食事やお酒を楽しみたいという紳士淑女の隠れ家的スポットは、いまだ健在である。その西中洲で20年以上、福岡・博多の食通たちに舌鼓を打たせてきた「博多なゝ草」が今年(2016年)3月末をもって閉店する。
お店がオープンしたのは1995年5月28日。おかみの村上友子さんは、癌を宣告されたおばさんと一緒に、おばさんの「食べ物屋をやりたい」という夢を実現した。店名の由来は、おばさんの誕生日であった1月7日の七草粥。当時は、カウンターしかない広さで、ガスコンロ1個で料理を作っていたという。「おばが亡くなった後、1、2年は毎日マラソンをしているような感覚でしたよ。それでも、今思えば、信じられないけど、休みには遊びに行っていましたね。学生時代、陸上の中距離で鍛えていましたから(笑)」とおかみ。
「博多なゝ草」には、スペアリブや茶そばのかき揚げなどの定番や旬の食材に合わせた料理がいつも30メニューほど用意されている。栄養士であるおかみがつくる料理は、店名通りの“体にやさしい”料理。外食には揚げ物や塩分が強い料理が多いが、「博多なゝ草」は「ここに来れば食べれるものがある」とお客に喜ばれてきた。客の好みに合わせるのはもちろんのこと、栄養士として食べる順番を教えたり、塩分がないほうれん草のお浸しなど、健康状況に合わせたメニューを用意したりと、どんなに忙しくても『食』へのこだわりがあった。「おかみが客との会話のなかで踏み込めるから、(おすすめメニューの)答えが出てくるんですよ」と常連さん。おかみの気さくな人柄も、多くのお客に元気を与えた。
お店はオープンしてから2年半後に改装し、隣接するテナントをつなげて広くなった。古民家のようなムードが漂う店内は、カウンターとテーブル席があり、ゆったりとしたスペースでおかみの料理を楽しめる。窓から見える那珂川は、中洲のネオンを川面に映す。昔は、眩しいくらいに明々としていたが、その灯りはだいぶ寂しくなった。むしろ今では、明るい笑顔があふれている「博多なゝ草」のほうが、眩しいのではないだろうか。20年間、料理でお客を元気にしてきたおかみは、いわゆる“寿退社”。たくさんのお客の温かい拍手に送られて、新しい人生に足を踏み出す。
【長丘 萬月】
<SHOP INFORMATION>
博多なゝ草
所在地:福岡市中央区西中洲4-6
営業時間:午後5時~午後10時
(土曜は午後9時まで)
休み:日曜・祝日
TEL:092-731-7793関連キーワード
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