2024年11月22日( 金 )

公園の再整備を通して即戦力を、単なる学び舎で終わらせない実践教育

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

福岡大学 工学部 社会デザイン工学科 景観まちづくり研究室 教授 柴田 久

学生たちとともにつくり上げた警固公園

fukuoka_kego 福岡市天神の警固公園は、市街地の公園として福岡市民のみならず広く愛されてきた。しかし、築山や生い茂る木々が園内の見通しを悪くする天然のカーテンとなり、夜間を中心に犯罪の温床となってしまっていた。

 「本来公園というのは誰もが安心して利用できる場所であるべきです」。そう語るのは2012年12月に完了した警固公園再整備のデザインを手がけた福岡大学工学部教授・柴田久氏だ。柴田氏は研究テーマのひとつとして警固公園の『中心性評価』に取り組んできた。これは、公園がその場に集う人たちにもたらす心理的効果や、公園そのものが持つ人を引き付ける力を指標化するもの。また、警固公園全体に暗がりのできる場所がどれくらいあるか、他区における公園の電灯数や治安状況など、防犯まちづくりの調査実績もあったことから、福岡県警に声をかけられ警固公園の再整備を前提とした対策会議に参加することになったという。

 自身の主宰する「景観まちづくり研究室」の学生とともに再整備計画を中心となって進めた柴田教授は次のように話す。「公園内を人がどういう風に歩いていくのか、いわゆる動線調査に始まり、県警、市役所、近隣住民の方へのプレゼンに使用する模型の作成、さらには公園の再整備に必要となってくる資材や材質に関する細かな打ち合わせも、学生たちに従事してもらいました。まちを代表する公園の整備に携わることなど滅多にありません。これから社会に出ていく学生たちにとっていい勉強になりますし、仕事の流れ、多くの人達の苦労、社会の厳しさ等を肌で感じてほしかった。学生だからという甘えは通用しません。そうした厳しい状況下でプロジェクトをやり抜くことが大きな成長につながっていくようです」。卒業後、即戦力の建設技術者や設計士、デザイナーとして活躍しているメンバーがいることからも、柴田教授の想いはしっかり伝わったと言えるのではないだろうか。

安心と都市景観との調和が人を呼ぶ

 「とくにこだわったのが公園内を『見える』ようにする、魅力的かつ安心だと感じられるようにすることでした。そのためにまず新しい動線をつくりました。公園中央に広いスペースを設け、その中心を抜ける通路も設けました。また、園内がソラリアプラザや西鉄天神駅などの周辺施設からも見えるように木や園内設備の配置、高さにも気を配り、雰囲気をつくる照明付きのベンチも新設しました。

 プロジェクトは丸2年。ある大学4年生は院生生活をすべてこの警固公園のプロジェクトに費やしました。学生たちは本当によく頑張ってくれました」(柴田教授)。
 大学の研究室と行政、民間企業がチームとして動き続けた2年間の成果は、『2014年度グッドデザイン賞』の受賞といったかたちで評価を受けた。だが何よりも嬉しい成果は「人が人を呼ぶという流れを園内につくり出せたことです」と柴田教授は語る。足が自然に警固公園に向かう、この日常をつくり出してくれた柴田教授と学生たちは、今も福岡のまちに新たな憩いの場を提供し続けている。

※記事内容は2015年8月31日時点のもの

<INFORMATION>
福岡大学
学 長:衛藤 卓也
所在地:福岡市城南区七隈8-19-1
創 立:1934年4月
TEL:092-871-6631
URL:http://www.fukuoka-u.ac.jp/

<プロフィール>
sibata柴田 久(しばた ひさし)
東京工業大学大学院 情報環境学専攻博士課程修了。景観工学、都市計画学を専門とし、建設景観学、景観デザイン論、まちづくり演習等の講義を担当。 土木学会、都市計画学会、日本造園学会等に所属。2014年に『グッドデザイン賞』、2015年に『第26回福岡市都市景観賞大賞』を受賞するなど、数々の受賞歴を持つ。

 

関連キーワード

関連記事