与信管理の学問化を目指し大学と提携
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(一社)与信管理協会 専務理事 菅野 健一
日頃の与信管理が経営破綻を予防する
与信管理は、リスク・マネジメントの基本的な能力として、業種や企業規模に関わらず求められている。だが、これまで学問として系統立てられることもなく、長年、組織立った団体もなかった。
同協会専務理事の菅野健一氏は、企業勤務時代に国内外与信審査を究めた後に独立、与信管理会社リスクモンスター(株)を設立。現在は同社代表取締役会長として、与信管理業の中核的存在として活躍している。同業界に対する思い入れは篤く、「団体がない業界はいずれ滅びゆくだろう」という切実な思いで2010年にAcm‐J日本与信管理協会を設立、13年に(一社)与信管理協会に改組した。12年より「与信管理士」認定制度も設け、与信管理実務専門家の育成にも努めている。
企業の信用とは商売の根源であり、与信管理は本来非常に重要なはず。これを協会としてきちんと整備し、学術的にも価値あるものとして社会的・経済的な効果を明らかにすべきだと考えた菅野専務理事は、千葉商科大学と提携し、与信管理を学術的観点から取り上げようという取り組みも進めている。
菅野専務理事は、「日本経済に大打撃を与えたバブル崩壊の原因は、与信管理業界に秩序やルールがなかったから」と捉えている。それは事後に金融庁が「金融検査マニュアル」をつくり、融資や債権管理の方法を細かく規定したことからも見て取れる。「企業の経営がうまくいっているときは手を打たず、悪くなってから対処しようとしてもダメです。平時から信用リスクコントロールを各々の企業がすべきです」(菅野専務理事)。それによって経済の効率化が担保されるという。もはや与信管理は一企業の問題ではなく、経済社会全体で考えるべき責任問題なのだ。
経営者自身に求められる与信管理力
「与信管理の在り方も、時代によって変化してきています」と菅野専務理事。経済成長著しい時代では、普通に経営していればとくに倒産リスクにおびえる必要もなかった。それでもつぶれる弱者としての企業を、強者である普通の企業が管理するのが与信管理のテーマだった。しかし経済成長が低迷する時代になると、もはやどの企業も与信管理される立場となる可能性が出てきた。今後は自社の信用をどう維持していくかということが最大のテーマとなるだろう。「弱者と転じたとき、いかにして信用を得、強者に戻るのか、という方向に、与信管理の在り方も変わっていくべきだと思います」。このとき必要とされるのが、経営者自身が与信管理力を備える、ということだ。
財務や経理、営業に派生する業務テクニックという色合いが濃かったため、一担当者の業務とみなされがちだったが、もはや経営者自身が心得るべきこととなった。「上場企業ならコーポレートガバナンスや内部統制は義務ですから、さまざまに手を尽くして取り組んでいます。しかし、中小企業にやれることには限界があります」と菅野専務理事は言う。だからこそ一度、自社が他社からどう思われているかという観点から、自社を冷静に見つめ直してみるのがいい。「とくにオーナー企業は、株主と経営者が同一なので、内部統制における牽制の仕組みが欠けています。ですから優秀なオーナー企業経営者は日ごろから、自分をどう律するかに頭を悩ませています。そうした意味でも与信管理のノウハウを学ぶことによって、自社をセルフチェックし、内部統制機能を持たせることが大切です」(菅野専務理事)。
日本経済を支えるほとんどの企業が中小企業であるからこそ、これからの経済界に与信管理力を備えた経営者が真に求められている。その需要増加を見込んで、同協会では15年10月に、九州支部を予定開設している。
※記事内容は2015年8月31日時点のもの
<INFORMATION>
(一社)与信管理協会
代表理事:奥島 孝康
所在地:東京都千代田区岩本町1-3-2
日伸ビル2F
設 立:2013年4月
TEL:03-5829-4389
URL:http://yoshin-kanri.com/<プロフィール>
菅野 健一(すがの けんいち)
1969年生まれ。神奈川県出身。慶応義塾大法学部を93年に卒業。日商岩井(現・双日)勤務時に国内海外与信審査担当者として道を究める。2000年、リスクモンスター(株)を設立、04年代表取締役社長に就任。現在は会長として、与信管理業界全体の発展に寄与する。関連キーワード
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