高浜原発停止が示した「安倍の大獄」の終わり
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9日、滋賀県の大津地裁が福井県の高浜原発3号機、4号機の運転停止を命じる仮処分を決定した。これを受け、高浜原発3号機は10日夜に原子炉が停止。関西電力は不服申し立ての準備を進めており、今後は裁判所が仮処分を取り消すかどうかが焦点となる。
この件に関し、エネルギー問題に詳しい認定NPO法人環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏に話を聞いた。飯田氏は、「高浜原発停止の仮処分は『安倍の大獄』が長続きしないことを示唆する画期的な決定だ」と評価する。高浜原発は、3号機が2月26日から営業運転を開始。同日に4号機も再稼働したものの、29日には発送電作業中のトラブルで原子炉が緊急停止した。そうした状況で、大津地裁が安全性に関する関電の証明は不十分と判断したのだ。
3.11後の、政府の原発再稼働への動きを、飯田氏は幕末の「黒船襲来」と「安政の大獄」になぞらえる。黒船が来航したとき、江戸幕府(守旧派)は大きな危機感を抱いた。一方で、尊王攘夷の熱いエネルギーが湧き起こった。その反動で、江戸幕府が尊王攘夷派を弾圧する「安政の大獄」が起こる。この「引き潮のようなマイナスエネルギー」が、今まさに安倍政権によって引き起こされているという。
つまり、福島第一原発事故という日本の大きな危機があり、自民党と電力会社・経済界と経済産業省の守旧派らが利権を守ってきた原発は「ない方が良い」と考える国民が大幅に増えた。代わりに、10年前はとるに足らなかった自然エネルギーが大きな存在感を示すようになった。3.11前と後では、明治維新並みに、まったくエネルギーへの価値観が変わったのだ。
ところが、守旧派はその反動で、ありとあらゆる手段を講じて「原発再稼働」を推進。安倍政権は再稼働反対の声を圧殺している。これがまさに「安倍の大獄」ともいうべき状況だと、飯田氏は指摘する。ただ、「守旧派による反動は長続きしない」とも飯田氏は言う。すでに世界的に大きなエネルギー変革が起こっているからだ。世界的にみれば、風力発電は10年前に世界全体で5千万キロワットで原発50基分だったが、昨年だけで新たに原発64基分の設備が、また太陽光も原発3基分しかなかったが、昨年だけで原発59基分もの設備ができているのだ。
飯田氏は、「原発廃止のルールと時間軸を国民的に合意したうえで廃止すべき」という考えを崩していない。即ゼロか、はたまたドイツ型の段階的廃止か。いずれにせよ、守旧派の揺り戻し(原発再稼働の推進)は長続きせず、日本でも遅からずエネルギーの大変革がやってくるだろう。【大根田 康介】
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