過酷事故再発を前提とした原発再稼働推進
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、東日本大震災および福島原発事故から5年が経過し、現在、安倍政権下で推進されている原発再稼働について警鐘を鳴らした、3月13日付の記事を紹介する。
東日本大震災、福島原発事故から5年の時間が過ぎた。いまなおその後遺症は深刻に広がっている。犠牲になられた方のご冥福をお祈りするとともに、いまなお厳しい状況に置かれている方々に心からお見舞いを申し上げたい。
日本は世界有数の地震国であり、過去に巨大津波による大被害を受けてきた国だ。人間は自然の力には逆らえない。地震や津波と共に生きてゆくしかない。その自然環境を踏まえたとき、日本で原発利用を考えること自体に無理がある。
福島原発事故の原因はいまなお明らかにされていない。その理由は、日本の原発稼働を不可能にする可能性があるからだ。東日本大震災では津波による被害が大きかったが、それ以外に、当然のことながら地震の揺れによる被害も大きかったのである。
東京電力福島原子力発電所は、この地震および津波によって過酷事故を引き起こした。原子力事故評価基準で最悪にランクされる過酷事故を引き起こしたのである。
幸いなことに、その過酷事故は、あとほんのわずかな相違で、現状とは比較にならないほど深刻なダメージを日本全体に与えるところだった。福島原発の立地が日本列島の東側海岸であったために、原発から放出された放射性物質の多くは太平洋側に流された。2011年3月14日に事故発生以来初めて降雨があったタイミングでは、原発周辺の風向きが北西であった。このために浪江町や飯館村の放射能汚染が深刻になったのである。また、原子炉の爆発がさらに大規模なものになっていたら、日本の歴史はここで潰えてしまっていたかも知れない。それほどに重大な事故が発生したのだ。原発の危険性が高まり、東電関係者が現場から全員退避することが現実に検討される事態が生じていたのである。まさにかすかな可能性をつないで、最悪の事態が回避されただけなのだ。その事態の重さを権力者はまったく認識していないように見える。このような事態は、絶対に二度と引き起こしてはならないのである。
ところが、安倍政権の基本姿勢は異なる。「事故は発生し得ることを前提に」原発再稼働を推進しているのだ。このことは、過去の「原発絶対安全神話」を前提にした原発利用拡大の反省に立ったものとされる。
過去においては、「原発は絶対的に安全な存在」であることが前提とされていた。原子炉は五重の防護壁に守られているから、絶対に安全なのだとされてきた。しかし、この絶対安全神話は、あまりに杜撰なものだった。原発が電源を失い、炉心の冷却が不可能になれば、五重の防護壁はいっぺんに壊滅してしまうのである。冷静に考えれば誰にでも分かる原理が存在しながら、「絶対安全神話」を流布してきた罪は深い。いまの安倍政権は、「原発事故は発生し得るとの前提に立って」原発再稼働を進めている。「原発絶対安全神話」は成立しないことが明白になったから、今度は、「原発事故は発生し得る」ことを前提に原発稼働を進めると言っているのだ。これは筋違いも甚だしい。
原発事故が再度発生することを前提に原発を再稼働させるべきではない。原発の規制基準は、絶対安全を確実に確保するレベルに設定される必要があるのだ。「絶対安全」はないのかも知れないが、「絶対安全」を確保するレベルで規制基準が設定される必要があることは当然のことなのだ。
ところが、安倍政権下で推進されている原発再稼働容認の基準は、卒倒するほどに低いのである。
※続きは3月13日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1385号「原発の絶対安全を目指していない安倍政権」で。
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