北洋建設総帥・脇山章治氏の次なる戦略は?(7)
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(株)九州みらい建設グループとは(2)
07年の経営破綻を経て新天地・鹿児島で再起
西釜建設(株)
地場有力ゼネコンへ成長
西釜建設(株)は、熊本県にて1931年1月に創業者である西釜茂吉氏が個人創業後、2007年7月に倒産するまで、通算70年以上の業歴を有する地場古参の建築業者だった。官公庁を主力受注先として、実績を重ね、02年5月期には売上高31億179万円を計上するなど、知名度、実績ともに当地区上位にランクされる1社として知られていた。公共事業の削減が始まると、住友グループや一般実需筋に対する戸建住宅メインへとシフト。(株)北洋建設と同じく、住友林業が主要受注先に並んでいた。その後、売上高は20億円台を推移し、公共工事の割合の高かった時期に比べ、安定するようになった。
しかし、同業他社との競合激化の影響により、極端な安値受注を繰り返し、採算性も低調となり、わずかな黒字を残すだけの状態が続いていた。業績の悪化にともない、借入金が増大し、年商の約半分まで膨らみ、厳しい資金繰りを強いられていた。そのようななか、04年9月にニシケン企画へ会社分割されたことで社有不動産はほとんどなくなった。取引銀行主導による借入金の子会社シフトが、生き残り策として採用された。社有資産の売却および社有資産と借入金の子会社移行にともない、西釜建設本体の財務内容は好転していたが、有利子負債の返済は遅々として進まず、先行不透明感を一掃できる材料はなかった。経営再建を目指していたが、07年7月10日、決済のメドが立たないことから、事業継続を断念した。負債総額は、債権者169名に対し20億7,497万円。
北洋建設で南九州を統括
その約1年後、同社の代表であった西釜茂文氏は08年6月、北洋建設に常務取締役として就任。南九州地区本部(北洋建設熊本支店)にて、南九州を統括していた。倒産を経験したとはいえ、地区上位のゼネコンにまで成長させた手腕のほか、熊本での知名度は高く、既存顧客も多い。また「住友林業」という北洋建設との共通点が両社を引き合わせたのだろう。(株)九州みらい建設グループ発足に際し、熊本には三ツ矢建設(株)の存在があり、さらには西釜建設が一度熊本で倒産していることから、再起の地を新天地、鹿児島に決めたと考えてよい。当然、北洋建設入社後、西釜氏の働きぶりが評価されての再スタートと考えられる。
新天地で再起なるか
15年4月に新西釜建設を設立。現在、同社は北洋建設鹿児島支店および扶桑管理(株)グローバルレント鹿児島店と同じ部屋に入居し、建設業許可の申請を含め、事業開始の準備を進めている。役員は西釜氏1人であり、まさに一からのスタート。5月下旬、同社を訪問したが、西釜氏は不在。ほとんど事務所に姿を見せず、あいさつ周りの日々を過ごしているようだ。北洋建設で南九州を統括していたとはいえ、鹿児島は「よそ者を受け入れ難い」土地柄と聞く。北洋建設のバックアップなしに、好スタートはあり得ないだろう。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:西釜 茂文
所在地:鹿児島市大黒町4-11
設 立:2015年4月
資本金:2,000万円
住友グループの流れを汲む地域密着の地場ゼネコン
扶桑建設(株)
杵島炭鉱がルーツ
扶桑建設(株)は、扶桑開発(株)(住友石炭鉱業グループ、現在の住石マテリアルズ(株))の事業を継承し、2005年12月に設立された。前身の扶桑開発は1969年3月に杵島炭鉱から分離し、住友石炭鉱業(株)全額出資の子会社として設立。以来、建築、土木工事の設計、施工を手がけ、地域社会におけるまちづくりに貢献した。同社は、総合建設業として事業を継承し、さらなる事業の発展に尽力し今日に至る。営業拠点は、佐賀県大町町の本社と福岡支社の2カ所。同社の経営理念は、「お客様に“感動と満足”を提供できる企業を目指します。気配りと親切、真剣な対応でお客様の期待を上回るサービスを提供します。新しい時代を牽引するプロの技術者集団として地域社会に貢献します」と明示されている。
同社の事業構成は、建築工事約83%、とび・土工工事約10%、土木工事約7%となっている。工事の受注先は、民間の元請が約64%、官公庁約30%、下請約6%の割合である。近年の工事の実績は、大町町発注の公共施設、佐賀大学施設の新築・改築そして(株)北洋建設およびその関連会社からの発注が多数を占める。直近の工事で、13年3月に福岡地裁に民事再生法を申請した有明ゴルフ(株)の発注で、有明ゴルフが運営する武雄ゴルフクラブの造成・改築工事が6,000万円ある。有明ゴルフのスポンサーは、北洋建設との関わりの深い興和日東(株)である。
地元での存在感が薄い
同社の業績は、14年10月期の売上高は14億2,577万円で、前期より7.8%減。直近5期の売上高を見ると、11~15億円のゾーンを推移しており、14年10月期の売上高は同社の実力相応と見る。財務面を見ると、純利益率が1.87%と高い水準ではないものの、毎期同水準の利益は確保している。14年10月期時点で、有利子負債が一掃されて無借金となっている。支払い面などの安全性も高く、自己資本比率41.55%と強固な財務体質を構築している。
一方で、同社について取引関係や地元の企業などにヒアリングを行った結果、地元の総合建設業としての存在感が薄いことがわかった。「建設業ということくらいで、それ以外の内容は知りません」という類の声が圧倒的で、なかには「聞いたこともありません」という意見もあった。長年、地元の経済を牽引した杵島炭坑の流れを汲む企業としては、物足りなさを感じる。
また同社は、北洋建設およびそのグループへの依存度が高く、直近5期で受注の依存度が16~30%のゾーンで占めている。今後もその関係性が解消されることはないだろう。「北洋建設の傘下で活動している」という関係筋からの声が多数で、同社の北洋建設とそのグループへの忠誠心は高い。<COMPANY INFORMATION>
代 表:亀川 謙二
所在地:佐賀県杵島郡大町町大字福母2405
設 立:2005年12月
資本金:7,000万円
売上高:(14/10)14億2,577万円
(つづく)
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