2024年12月19日( 木 )

韓国総選挙でパク・クネ与党が惨敗、焦点は大統領選へ~大本命のパン・ギムン氏が本格浮上へ(前)

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 4月14日に投開票が行なわれた韓国の総選挙で、パク・クネ政権に対する厳しい審判がくだった。与党の「セヌリ」党は過半数の議席確保に失敗して122議席に止まり、123議席を確保した「共に民主党」に第1党の立場を譲る大惨敗を記録した。16年ぶりの「与小野大」の政局が生まれた。パク・クネ大統領のレームダック化は名実ともに明らかになった。韓国の政局はさらに混迷を深めるのが確実である。

 しかし、韓国は大統領制の国家だ。大統領の権力が、政治だけでなく全ての分野に影響を与える国家だ。国会議員の動向は二次的な要因だ。「関ヶ原」は来年12月の大統領選挙である。

 ここで大胆に予測しておこう。

korea 惨敗した与党勢力は、国連事務総長の国連事務総長の潘基文(パン・キブン)氏を擁立するしか勝ち目は無い。国際社会で彼の能力には多くの疑問が提示されているが、韓国人好みの「国際的人物」ではある。野党勢力が「共に民主党」「国民の党」に分裂している状況では、彼が次期大統領の座に一番近づくだろう。ただ日本側としては、「誰が韓国大統領になっても日韓関係は変わりばえしない」。そんな冷めた目でうんざりしながら見守るのが賢明である。

 与党セヌリ党の選挙成績は、本当にみっともなかった。ソウル首都圏で惨敗しただけでなく、伝統的な票田である大邱、慶尚北道、慶尚南道でも、野党と無所属候補に多くの議席を明け渡した。「朴槿恵大統領に対する有権者の厳重な審判でもある」。そういう日韓メディアの指摘は正しい。かつて「選挙の女王」と呼ばれた名声は、地に落ちた。

 彼女が大統領としての資質に欠け、国運を任せられる人材でないことは、すでに内外政策で明らかだった。彼女のあだ名は「不通大統領」である。何を言っても通じない傲慢な大統領という意味だ。「馬の耳に念仏」だったのだ。韓国メディアは「謙虚に国民の声を傾聴し、国政運営方法を完全に改めることだ」と指摘する。そういうことが出来る大統領ならば、こういう最悪の局面を迎えるはずがないのだ。

 一方の野党勢力は、総選挙での「大健闘」で、逆に難しい局面を迎えた。

 「勝って兜の緒を締めよ」と言う。でも、そんな韓国の政党を見たことがない。勝てば政治家の慢心が広がり、自己破滅的な党内対立が広がる。この悪弊が今後の大統領候補選びの中でも、噴出することが予想される。総選挙での勝利が大統領選挙に直結しない。韓国政治で何度も繰り返されて来た現象なのだ。

 第1党に躍り出た「共に民主党」は、首都圏をはじめ多くの地域で善戦した。しかし、これは自らの力で収めた勝利ではない。パク・クネ政権に対する民心離れの反射利益に過ぎない。それは野党の伝統的地盤であった湖南地域(全羅北道と全羅南道)28議席で、新生の「国民の党」が23議席を確保し、牙城の光州市では、「ともに民主党」が全敗したという点でも明らかだ。

 新生の「国民の党」も、確固たる第3党の政党に「大躍進」したとは言いがたい。地方区での当選者は、安哲秀(アン・チョルス)代表ら25人に留まっているからだ。とても「全国政党」というレベルにはないのである。

 今回の韓国総選挙報道で、もっとも冴えた結果分析をした新聞は、反政府系の「ハンギョレ」だ。

 15日付社説で「民心は実に奥深い。現政権にはっきり反発しながらも、野党にも絶対的な支持をしないバランス感を示した」と分析した。同紙によると、韓国の有権者は地方区では「共に民主党」候補に投票しておきながら、政党投票では国民の党に投票するという「クロス投票」をした痕跡がはっきりと認められるという。これは野党支持傾向がある有権者が、当選可能性を考慮して「共に民主党」候補に投票をする一方で、実際には「共に民主党」の現状に満足してはいないという意思表示を行なったものだ。その結果、第1党になった「共に民主党」が、政党投票では第3党の「国民の党」に遅れを取るという珍奇な現象が現れたのである。ことほどさように韓国の民心は揺れ動いているのだ。

(つづく)

<プロフィール>
shimokawa下川 正晴(しもかわ・まさはる)
1949年鹿児島県生まれ。毎日新聞ソウル、バンコク支局長、論説委員、韓国外国語大学客員教授を歴任。2007年4月から大分県立芸術文化短期大学教授(マスメディア論、現代韓国論)。
メールアドレス:simokawa@cba.att.ne.jp

 
(後)

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