韓国経済ウォッチ~崖っぷちに立たされた韓国海運業界(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
韓国は数年前まで、世界ランキング10位以内入る海運会社を2つ持っていた。1976年に設立された現代グループの現代商船と、77年に設立された、大韓航空で有名な韓進グループの韓進海運である。
現代商船は、同グループの現代造船が受注した2隻の大型石油タンカーを、顧客の事情によって納品できなくなり、その問題を解決するために設立されたの始まり。スタートはそのようなものであったが、韓国の海運業は、韓国政府の貿易振興政策とともに、順調に伸びてきた。というのも、輸出入貨物の99.7%は、船舶で運ぶ海上運送なので、韓国の海運会社は、韓国の貿易拡大の波に乗って、成長することができた。
韓国の海運業の運送サービスの輸出額(14年)は、346億ドルである。輸出貢献度においては、半導体、自動車に次いで6番目を占めるほど、韓国では大事な産業の一角を占めていた。韓国の海運業は、世界的に見ても、世界5位にランクされるほどの実力であった。ところが、時には浮き沈みを経験しながらも、順調に成長してきた韓国の海運業であったが、世界金融危機が発生することによって、様子は一変した。
リーマン・ショック前までは、海運業界は6年間にわたって運賃が上昇し続け、長期好況を謳歌していたが、金融危機後には、貨物の減少、運賃の下落、船舶の供給過剰に見舞われるようになる。どれほど運賃が下がったかというと、2008年5月23日にバルチック海運指数は1万1,677ポイントであったが、同年の12月5日には、20分の1の水準である678ポイントにまでなってしまった。このような不況は現在でも続いており、金融危機以降、韓国では80社以上の海運会社が倒産、または法廷管理(会社更生)に入った。
このようになった原因について、世界金融危機という外部要因のほかに、業界では、韓国海運会社の未熟な経営戦略と、韓国政府の対応策不在を指摘している。またそれ以外に、貿易環境自体も、大きく変化しているということを原因として挙げている。環境変化のなかでも、世界の貿易における中国の台頭は、重要な変化である。中国は、世界の生産基地として浮上し、過去10年間で、生産量は3倍に増加している。2030年になると、中国の貿易量は、世界1位になり、インドが2位、アメリカが3位になると予測されている。それに、今後は東南アジアとアフリカなどが、新興市場として浮上することも環境の変化であろう。
それから、海運業が好調であった時期である03~07年に、船舶の注文が多すぎたことも指摘されている。中国は自国の造船産業を育成するため、多くの船舶を建造することになるが、それが結果的に船舶の供給過剰をもたらし、運賃を下げている。このような状況下で、世界的な海運会社は、コストを下げるための努力を弛まなかった。 世界的な海運会社は、航路や埠頭を共同利用したり、コストを少しでも削減しようとして、大手同士で提携したり、合併したりした。世界1、2位の海運大手であるデンマークのマースクとスイスのMSCが提携したり、中国は中国で海運同盟の強化に動いた。
現在、世界の海運同盟は4つあるが、さらに2つに統合されて行く可能性は高い。(つづく)
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