2024年11月26日( 火 )

福岡教育大学長選が混乱、教員らネット上で非難の声

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教員採用率9割以上目指し再出発を図る

自然に囲まれた福岡教育大学<

自然に囲まれた福岡教育大学

 福岡教育大学(福岡県宗像市)の運営をめぐり、混乱が収まらない。その象徴的な出来事が、2015年度に実施された学長選だ。今年4月1日に前副学長の櫻井孝俊氏が新学長に就任したが、これに対し教員らが反対を表明。櫻井学長と前学長だった寺尾愼一副学長の解任と選考やり直しを求めた。大学側は静観を決め込んでいるものの、インターネット上では教員や市民らがその運営姿勢を糾弾する記事を連日上げる状況が続いている。

 櫻井氏は4月14日、就任記者会見で第3次中期目標・中期計画により、2022年度までの6年間で学生の9割以上を教員に就けると述べた。中期目標とは、国立大学法人などが6年間に達成すべき業務運営に関する目標で、文部科学大臣が定め、公表することになっている。中期計画はこれを達成するために作成する計画。福教大側の説明によると「計画策定は法律で決められており、取り立てて目新しいことではない」。

 15年における同大の教員就職率は63.6%。全国は60.5%なので、取り立てて低いということはない。全国1位の和歌山大でも75.5%で8割に到達しておらず、福教大が掲げた9割以上という数字はあまりにも突出している。これについて大学側は「教員養成という本来のミッションに立ち戻り、大学として社会的責任を果たすため」とした。

 さらに16年度以降における教育学部の教育内容と入学者選抜方法の変更を発表。大幅に変わっているのは初等教育教員養成課程で、15年度までは国語や数学など選修ごとに募集、選抜していたものを課程全体に切り替えた。これにともない、募集人員も385人に拡大している。15年度の入試では予定の331人に対し346人が入学しているが、それでも385人に到達していない。どの大学でも少子化が最大の問題であり。それは福教大でも例外ではないだろう。目標を達成するための壁は、はるかに高い。

学長選の年に次々と問題が噴出

 福教大では15年度に入り、次々と問題が噴出している。7月23日には授業内容がインターネット上に掲載されたことを受け、教員の教育活動に問題があり、また学生が批判されていると指摘されているとして、その教員の授業を停止すると発表した。これは准教授が同21日の授業中に安倍政権批判や安全保障法案に反対するデモの練習を学生たちにさせていたというもので、学生の1人が短文投稿サイト「ツイッター」に書き込み、それがネット上で次々と拡散されたことから発覚。この准教授は11月26日に停職3カ月の処分を受けている。

学内に掲示された学長解任と選考やり直しを求める文書<

学内に掲示された学長解任と選考やり直しを求める文書

 毎日新聞は12月6日付朝刊で、同大の4年生向けの講義の1つが開けない事態に陥っていると報じた。未開講になったのは、裸の女性をモデルに彫刻を制作する「人体習作」で、13人が受講できなかった。毎日新聞は運営交付金の削減を未開講の理由に結びつけたが、大学側はこれを否定。対象の学生については代替措置が取られ、また必修科目でなかったことから卒業に問題は生じていないものの、大学側は未開講の理由が予算面だったことを認めており、授業計画(シラバス)に掲載した講義を開けなかったことに対する責任は重大と言えよう。

 また福教大教職員組合は、福岡県労働委員会に不正労働行為救済を申し立てていたが、16年2月10日付で同大に対し同委員会から命令書が発せられた。しかし大学側は受け入れられる内容ではないとして、中央労働委員会に再審査を申し立てている。これに反発した組合側は4月11日に櫻井学長、寺尾副学長の辞任を要求する声明を発表し、学内の掲示板に張り出した。掲示板は事務局や学生会館が入居する建物のすぐそばにあり、誰でも目にすることができる。組合側は徹底抗戦の構えだ。

 こうした一連の騒動を貫く柱に、学長選をめぐる問題がある。これについて櫻井学長も14日の記者会見で「不満があることは承知している」と認め、学内での議論を活発にすることでコンセンサスを取ると、事態を解決する意向を示した。しかし、市民らでつくったとする「福岡教育大学の学長選を考える会」や「大学再生を願う福岡教育大学教員の会」がフェイスブック上で大学側の姿勢を厳しく批判しており、事態が終息する気配はうかがえない。

【平古場 豪】

 

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