タックスヘイブンでの課税逃れチャンピオンは武富士の武井家(前)
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各国の指導者らとタックスヘイブン(租税回避地)との関係を明らかにした「パナマ文書」に登場する21万余の法人とその株主らの名前が、日本時間の5月10日、「国際調査報道ジャーナリスト連合」のウェブサイトで公表された。同文書は、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」が作成した1,150万点の電子ファイルだ。
パナマ文書に登場する日本の人や企業は400余
株主などとして挙げられている延べ37万人の人や企業のうち、日本は400余で全体では65番目となっている。警備業首位のセコム(株)、通信大手ソフトバンク(株)(現・ソフトバンクグループ(株))、商社の伊藤忠商事(株)、丸紅(株)の名前が登場。各社とも、違法性がないとの弁明に追われた。
意外感があったのは、日本の関係が400余と少なかったことだ。日本企業が、その事業で利益を上げれば、法人税や事業税が課税される。だが、その企業が海外のペーパーカンパニーに利益を留保したり、源泉課税がなされないかたちで送金していたら、課税されない。
こうしたペーパーカンパニーが大量につくられているのが、タックスヘイブンだ。税金が無税だったり、大幅に軽減されたりするので、税負担を減らせる。
この仕組みをつくったのは、7つの海を支配した大英帝国。今でも、英領バージン諸島がタックスヘイブンの聖地である。「パナマ文書」に登場する21万社のうち、11万社がバージン諸島で設立されている。日本企業が目を向けるのは、香港とシンガポールだ
国際金融の世界では、タックスヘイブンは当たり前のように使われていた。ペーパーカンパニーをさまざまなタックスヘイブンにつくり、その間の資金の移動を繰り返せば、元の資金の出どころはわからなくなり、税金を取ることはできなくなる。
これを仕組んできたのが、銀行、証券会社や弁護士、会計士だ。タックスヘイブンを活用した課税逃れを指南しなかった金融マンは、いないだろう。にもかかわらず、パナマ文書に登場する日本の関係は、400余にとどまる。なぜか?
はっきりしていることは1つ。お行儀が良かったからではない。日本企業がタックスヘイブンとして活用してきたのは、香港とシンガポールだったということだ。
香港・シンガポールは、日本と比較して税率が低い低税率国・地域であり、香港の法人税は16.5%、シンガポールの法人税は17%。両国の税率は、日本のタックスヘイブン対策税制(特定外国子会社合算税制)に定められた税率20%以下の国・地域に該当するため、香港・シンガポールに存在する法人は、日本のタックスヘイブン対策税制の適用の対象となる。
ただし、香港・シンガポールに共通した特徴として、ともにキャピタルゲインは原則として非課税という点にある。資本取引による収益であるキャピタルゲインは、税務計算上の益金とはならない。しかも、香港・シンガポールには、日本の住民税に該当する税制度はない。相続税・相続税についても、香港やシンガポールにはない。日本企業が香港やシンガポールを舞台にタックスヘイブンを活用する最大の狙いは、税制にある。
(つづく)
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