「長崎の教会群」2資産除外へ、世界遺産推薦見直し
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国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産登録への再申請を目指している「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」について、学識経験者らでつくる長崎世界遺産学術委員会は、14の構成資産のうち、長崎県内の2資産を「禁教期との関連が薄い」として、除外する方針を決めたことがわかった。
除外されるのは日野江城跡(南島原市)と田平天主堂(平戸市)。「長崎の教会群―」は今年1月、ユネスコの諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)が禁教期を重視した文脈で見直すように勧告し、これを受けて2月に国が推薦を取り下げた。長崎県は14資産を維持しながら禁教期と結びつけた推薦書を作り直し、イコモスとアドバイザー契約も結んで見直しを続けていた。
禁教期と、1587年の豊臣秀吉による伴天連追放令に始まり、1873年に明治政府が撤廃するまで続いたキリスト教の信仰が禁じられた時期である。この約290年間で宣教師やキリシタンと呼ばれる信者らに苛烈な弾圧が加えられた。長崎県としてもこの弾圧に重点を置いて「長崎の教会群―」の価値を説明してきたものの、イコモスは県が推薦している14の資産では証明が不十分であるとしていた。
日野江城は鎌倉時代に有馬氏によって築城され、13代目晴信がキリシタン大名となった。南蛮貿易で栄え壮麗な建物が築かれたが、江戸時代に有馬氏が断絶され廃城。1982年に国の史跡に指定された。
田平天主堂は1886年以降、黒島(佐世保市)や出津(長崎市外海地区)から移り住んだ潜伏キリシタンの後裔によって建設され、1918年に完成。長崎県内の教会堂を多く手がけた鉄川与助が設計、施工したレンガ造りの建物である。2003年に国の重要文化財に指定された。
いずれも日本のキリスト教の歴史に関係しているが、日野江城は秀吉の禁教令以前、田平天主堂は明治の解禁以後に建設されたことから、禁教期との関連性が薄いと判断されたものとみられる。これら2資産が除外されたことにより、残りは長崎、熊本両県の12資産。しかし、このなかには田平天主堂と同じく明治以後に建てられた教会も含まれているため、今後も除外される資産が出てくる可能性が残されている。
今年の世界文化遺産の国内候補は他に、大阪府の百舌鳥・古市古墳群、新潟県の佐渡金銀山、北海道・北東北の縄文遺跡群があり、このうち1件が選ばれる。
【平古場 豪】
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