2024年12月24日( 火 )

御年90歳!山口FG・田中耕三相談役の権力への執着心

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山口FGの『元老』は健在

office 再編が進む金融業界で、ライバル地銀同士でさえ合併するという新しい動きが世間の話題となる一方、一人の人間がいつまでも権力の座にしがみつくという旧態依然とした話がある。上層部の人事に影響力を持つ『元老』が健在する山口フィナンシャルグループ(以下、山口FG)のことだ。

 山口FGは、福田浩一社長(63)が、代表権のない会長および非常勤取締役となり、後任に吉村猛取締役(56)が昇格する人事を発表(正式決定は6月29日に開かれる予定の株主総会と臨時取締役会)した。ナンバー2の加藤敏雄専務(69)とナンバー3の野坂文雄専務(67)も退任し、加藤氏は北九州銀行、野坂氏はもみじ銀行のそれぞれ代表権のない会長および常勤取締役に就く。一見、山口FG上層部の世代交代のように映るが、主導したのは幕末のカリスマ・高杉晋作のような長州の若者ではなく、約四半世紀にわたり下関市の社宅に居住する元老・田中耕三相談役。田中氏は今年5月13日に90歳の卒寿を迎えた。

 田中氏は、1990年に山口銀行専務取締役営業本部長に就任。92年から10年間、同行頭取を務め、2002年に取締役会長ではなく相談役に就任。2年後、後任の田原鐡之助頭取が自分の意に沿わないため、罷免を画策。04年5月、当時51歳で最年少取締役だった福田氏を頭取に据えた。このエピソードは、小説「実録 頭取交代」(浜崎 裕治著、講談社)のモデルになっている。

 同行の内情に詳しい関係者は、「山口銀行本店では、専務以下は大部屋で、個室があるのは相談役と頭取だけ。専属の運転手および専用車も付く」と語る。山口FGおよび山口銀行の取締役でもないのに特権を与えられている田中氏。そのことは絶大な権力があることの証左。そして今回の人事交代では、田中氏の退任は不明となっている。

飽くなき権力欲も長州人の気質か

 今回の人事交代について、「加藤氏と野坂氏が常勤取締役であるのに対し、福田氏が非常勤となっているのは、ゴルフ訴訟の責任をとらされたからではないか」と囁かれている。田中氏は、福田氏とともに、(一社)下関ゴルフ倶楽部の経営陣の特権として半額料金でプレーしていたことなどで、一般会員から訴訟を起こされている。同法人で、田中氏は前理事長、福田氏が現理事長だ。

「一億総活躍社会」という言葉もあるが、いくら経験豊富といえども、業界のみならず、社会全体が激変するなか、高齢の権力者が己の意のままに組織をコントロールしているようでは、時代の変化に取り残されてしまうだろう。そこには、20代の若者たちがクーデターを起こして人事を刷新し、明治維新の原動力となった長州人の革命の気風は微塵も感じられない。考えようによっては、かつて明治維新を導いた長州の若者たちも山縣有朋や井上馨のように『元老』となり、長い間、権力の座についていた。飽くなき権力欲もまた長州人の気質かもしれない。

【山下 康太】

▼関連リンク
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