【熊本地震・有識者の見解】住宅・建設業界専門の法律事務所に聞く~震災における法的対応ポイント
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弁護士法人匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野 卓生 氏
同福岡事務所 常駐弁護士 内田 創 氏不足する事業者向け法律相談窓口
――熊本地震法律相談対策室を開設された経緯を教えてください。
平成28年熊本地震を受け、当事務所では福岡事務所に「平成28年熊本地震法律相談対策室」を開設しました。
当事務所福岡事務所に常駐している内田創弁護士が、平成24年から平成27年まで匠総合法律事務所震災復興まちづくり支援対策室にて、東日本大震災からの復興業務を中心的に取り扱ってきた経験と知識【表参照】を総動員して、住宅・建築・土木・設計・不動産業界の皆さまからの地震被害にともなう法律相談対応を実施しております。
被災地では、熊本県弁護士会所属の弁護士の皆さまを中心に、多くの弁護士の先生方が消費者の救済のために尽力されておりますが、請負契約や売買契約において消費者の相手方となる住宅・建築・土木・設計・不動産業界の事業者による相談窓口が不足しています。
東日本大震災発生直後に、多くの住宅会社から法律相談を受け、対応をしてきた際の経験と知識が、まさに、今、活かされており、微力ながら復旧・復興活動に貢献していきたいと考えております。――具体的にはどのような法律相談が寄せられていますか。
詳細は、平成28年熊本地震に際して寄せられた法律相談事例集をご確認ください。
不可抗力免責の範囲や工事途中の物件のやり直し工事費用負担、工期遅延への対応など、どれも東日本大震災の際に、被災地の住宅会社、建設会社から寄せられた法律相談と同趣旨であり、当事務所は、業界専門弁護士としての知識を惜しみなく提供させていただいております。――熊本地震特有の法律相談事例はどのようなものがありますか。
平成28年熊本地震では、震度7前後の前震および本震が2回発生していることから、ブロック塀に関して、前震では倒壊しなかったが、本震によって倒壊し、近隣に被害を与えてしまったという事案において、前震と本震の間でできることは限られていたが、そのような場合に、土地工作物の設置・保存の瑕疵の責任(民法717条)を問われてしまうのか、という相談が、今回の地震における特徴的な相談でした。
空き家のトラブルと活用
――地震と関連する空き家トラブルと国の方針などについて教えてください。
2015年5月に空き家対策等の推進に関する特別措置法(以下、空き家対策特措法)が全面施行されました。
空き家対策特措法は、適切に管理されていない空き家の情報を収集し、とくに危険であり、不衛生である「特定空き家」について所有者に除去、修繕などの助言や指導、勧告、命令ができ、所有者が従わない場合には、行政代執行することも可能とする法律です。
空き家が全壊状態となり、近隣住民への被害が発生するリスクが高い場合には、自治体は、上記手続きで空き家の解体を実行することが可能です。
また、賃貸住宅が被災し、現在、空き家になっている賃貸住宅もあります。今、みなし仮設住宅の役割を果たす賃貸住宅の数が少ないという問題が発生しており、内閣府は被災した民間賃貸物件を公費で補修する特例措置を決定し、1戸あたり最高57万6,000円を補助できる仕組みが整いました。
被災した賃貸住宅をできるだけ早く補修し、被災者のニーズにあった物件を提供していくことも重要な課題となります。――被害にあった事業者へ一言メッセージをお願いします。
天災被害は、注文者にも設計者にも施工者にも責めに帰すべき事由がないが、損害は発生しており、その損害の負担を協議して解決していかなければなりません。ここにおいて重要なことは、まず正確な法律知識を持つことであり、法律・判例の見解を基礎としてお互いを理解し合いながら復興の協力をしていく姿勢です。
「不可抗力免責」という言葉の意味も正しく理解しておかなければ、誤った知識で、被災者を突き放す対応をしてしまい、トラブルが激化してしまうリスクがあります。
私ども弁護士も、必要とされる法律・判例の知識提供を住宅・建築・土木・設計・不動産を扱う事業者の皆さま方へ果たしながら微力ながら復興に貢献してまいりたいと考えております。関連記事
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