2024年11月26日( 火 )

結局丸投げ、無責任な国際オリンピック委員会

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olympic-min 国ぐるみのドーピング問題が発覚したロシア選手団のリオデジャネイロ五輪出場の可否は、事実上、それぞれの競技の国際競技連盟(IF)によって決められることになった。国際オリンピック委員会(IOC)は自らに判断能力がないことを認めたと言える。結局、スポーツ大国であるロシアに譲歩せざるを得なかったということか。リオ五輪開催まで時間があまりにも少なく、こうした状況で「シロ」とされたロシア選手が色眼鏡で見られることは避けられまい。競技の公平性だけでなく、五輪の価値そのものも問われる危機的な状況だ。

 IOCにとって難しい判断だったことは間違いない。もしロシアをリオ五輪から排除していたら、どうなったか。ロシアの放送局は莫大な違約金を払ってでも、放映権を返上することが予想される。そうなると視聴者数が減り、IOCが各国の放送局と結んでいる契約にも大きな影響を与えかねない。IOCは放映権料とスポンサー収入で運営されている。放映権料は莫大な額に上るとされており、たとえば日本におけるソチ冬季五輪とリオ五輪の放映権料は合わせて360億円という。1984年のロサンゼルス大会から運営にショービジネスを取り入れたことで、五輪は巨額のカネが飛び交う場となった。ロシアがリオ五輪に参加しないというのはスポーツだけでなく、ビジネスの面からしても大きな損害になっただろう。

 しかしロシアでは2008年の北京、12年のロンドンの両夏季五輪で選手のドーピングが発覚し、14年のソチ冬季五輪でもロシアの組織的な薬物投与などの疑惑が浮上した。反ドーピングを掲げるIOCとしては、ロシアに毅然とした態度を取るべきだった。IOCのバッハ会長は「国全体の責任か個人の正義かの判断でバランスを重視した」と述べたが、IFに判断を丸投げしたことでIOCはその存在意義すら問われている。ドーピングというスポーツにとって最も重大な違反行為に何も判断できないIOCは、一度解体して出直すくらいの姿勢を世界に示さなければ、失われた信頼を取り戻すことはできないだろう。

【平古場 豪】

 

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