2024年11月23日( 土 )

80万票の投票誘導もたらした大規模選挙妨害

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、昨日投開票を終えた東京都知事選の結果について触れた、8月1日付の記事を紹介する。


 80万票の投票誘導もたらした大規模選挙妨害

 東京都知事選の結果が明らかになった。当選したのは小池百合子氏である。確定得票数は次のとおり。

当 2,912,628 小池百合子 無新
  1,793,453 増田 寛也 無新
  1,346,103 鳥越俊太郎 無新

 投票率は59.73%だった。

 猪瀬直樹氏、舛添要一氏が相次いで「政治とカネ」の問題で辞任に追い込まれた。この両氏を擁立したのは安倍自公勢力である。「政治とカネ」問題で辞任した知事を生み出した責任がある。
 その自公勢力が、結果に対する責任を明らかにすることもなく、2名もの候補者を擁立した。

 都知事選にはもう一つの重要な意味があった。それは、日本の首都東京から現在の安倍政治の流れを変えるのか、それとも、現状維持を貫くかの選択である。
 民主主義が健全に機能するには、主権者が全員参加で選挙に臨む必要がある。しかし、現実には全員参加からは程遠い。投票率は59.73%だった。

 今回の選挙結果がもたらされた最大の要因は公職選挙法にも抵触すると見られる激しい選挙妨害の存在だ。マスメディアが主導した選挙妨害とも言える。今回の選挙では鳥越氏に対する激しい選挙妨害が実行された。80万票が鳥越氏から小池氏にシフトして今回の結果がもたらされたと言える。

 日本の重要選挙における重大な問題は、マスメディアが著しく偏った報道を展開することだ。2010年9月の民主党代表選に際して、日本経済新聞元経済部長でテレビ東京副社長の池内正人氏は、インターネット上のサイト「あらたにす」に、次のように記述した。
 「大新聞が得意の世論調査をやればいい」「これが国政選挙の場合だったら、この種の世論調査は不可能だ。選挙法に触れるかもしれない。しかし一政党内の選挙ならば、規制する法律はないと思う」。
 池内氏が上記記事内で主張したことは、「マスコミが得意とする世論調査を使って、小沢氏が当選しないように仕向けるべきだ」という主旨の内容だった。

 これが日本のマスメディアの実態なのだ。「世論をありのままに調査する」のではなく、「世論調査を特定の目的のために利用する」というのだ。今回の都知事選で実行された情報流布もこれに倣うものだったと思われる。

 投票率が低く、マスメディアが情報を歪めて伝達する。あるいは、マスメディアが、特定の目的に沿って、情報を誘導する。情報工作、情報操作が大規模に展開されている。選挙に際しての報道には一貫性が必要だ。

 通常の選挙では、選挙期間に入れば、個別候補の状況についての報道は抑制されるのが常だ。今回の都知事選でも立候補者は21名もいる。法律上は各候補者の身分に差はない。したがって、報道においては、各候補者の取扱いに差異が生じないように、選挙活動期間に入れば、個別候補の情勢報道は抑制されてきた。
 ところが、今回の選挙では、選挙活動に入ると、突然、主要3候補の動静を伝える報道が激増した。

 その理由は、野党統一候補となった鳥越俊太郎氏の街頭での活動が相対的に少なく、しかも、鳥越氏ががんを克服して都知事選に出馬したという事情があったからだと思われる。「街頭演説の少なさ」をアピールできる、と同時に鳥越氏の健康問題への不安を人々に惹起させることができる。この判断から、マスメディアは、突然、主要3候補の選挙活動模様を大々的に報道し始めたのだと思われる。

 仮に、野党統一候補が鳥越氏ではなく、宇都宮健児氏であったなら、マスメディアは選挙運動期間に入っても、主要候補の動静を大きくは報道しなかったと考えられる。主要候補の動静を詳細に伝えると、宇都宮氏のきめ細かい政策公約が、主権者に強くアピールされる可能性が高いからである。

 つまり、「イカサマの賭場」と似たような状況で選挙が行われているのだ。ここにフリーの客が来場しても、ぼったくられるばかりである。とても近代民主主義国家とは言えない状況が広がっている。
 この日本の政治を変革しなければならない。

※続きは8月1日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1503号「氷河期の日本政治に春を迎えるために」で。


▼関連リンク
・植草一秀の『知られざる真実』

 

 

関連キーワード

関連記事