2024年11月27日( 水 )

ハゲタカ手先だけが推進する臨時国会TPP批准

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、安倍政権が進めるTPP批准についての批判を述べた、8月7日付の記事を紹介する。


 オリンピックの閉会式は現地時間で8月21日の夜、日本時間で8月22日朝になる。夏の甲子園は順延がなければ8月21日に決勝戦が行われる。国民の関心はオリンピックなどに引きつけられる。オリンピックが終わると、もうすっかり秋の気配が漂ってくる。夏休みも終わり、新たな局面が到来する。

 安倍政権は9月中旬にも臨時国会を召集する予定であるが、この臨時国会では2016年度第2次補正予算が審議されるとともに、日本のTPP参加が審議される。

 安倍政権が8月2日に閣議決定した経済対策は28兆円規模と伝えられているが、直接的な財政支出をもたらす資金量=真水は7.5兆円にとどまる。しかも、そのうち3.5兆円は2017年度分であり、今年度の財政支出は国と地方合わせて4.5兆円しか追加されない。「見かけ倒し」経済対策である。第2次補正予算は「お飾り」のようなもので、本腰が入っていない。

 安倍政権が全力を投入するのはTPP承認である。TPPを推進しているのは、グローバルに活動を展開する強欲巨大資本であり、強欲巨大資本の指令に基づいて、安倍政権が日本での承認を目指す。

 TPPが発効するには、署名から2年以内に交渉に参加している12カ国すべてで批准手続きが完了することが必要である。しかし、2年以内にこの手続きが完了しない場合でも、(1)12カ国のGDP合計の85%以上を占める、(2)少なくとも6カ国が手続きを完了する――場合には発効する。

 日本のGDPが17.7%、米国が60.4%を占めているため、日米2カ国のいずれかがTPPを批准しなければ、TPPは発効しない。
 このうち、アメリカはトランプ氏がTPPを承認しないことを明言している。クリントン氏は表向きTPPに慎重姿勢を示しているが、実態としては、条件付き賛成のスタンスであると推察される。
 オバマ大統領は新大統領が就任する2017年2月までの間に、米国のTPP批准を強行する考えを有していると見られる。しかし、上下両院で多数勢力を有する共和党のライアン下院議長は、8月4日に、TPP協定について、「国内の反発が強い項目の修正が必要だとして、現状のままでは、オバマ大統領の残された任期に議会で採決しない」との考えを明らかにした。

 米国が批准しなければTPPは発効しない。米国のTPP審議は2017年にずれ込む可能性が高く、新大統領にトランプ氏が就任する場合には、米国のTPP承認の可能性は極めて低くなる。この状況下で、日本が秋の臨時国会でTPPを承認する必要性は存在しない。

 安倍首相が8月3日に実施した内閣改造は、TPPシフトと呼べるものである。安倍首相は石破茂氏を農水相に起用しようとしたが石破氏に断られて断念した。代わりに安倍氏が起用したのは石破氏側近の山本有二氏である。経産相には世耕弘成氏が起用された。また、農水省の副大臣と政務官4人のうち3人が経産省元官僚が占めた。農水省が経産省に支配され、TPP推進に舵が切られている。

 内閣人事局が設置され、各省庁の幹部人事を内閣が支配することになった。官庁人事は菅義偉官房長官、さらに、安倍首相が直接支配する体制が整えられた。このこと自体、「官高政低」を是正し、「政治主導」の行政を実現するために悪いことではないが、問題は「政の質」である。

 「政の質」が悪ければ、「政高官低」の人事運営は悪い結果しか生まない。「政の質」が良いか、悪いかは、主権者が判定するべきことだが、「日本をハゲタカ資本に売り渡すべきではない」との立場に立つ限り、現在の安倍政権の「政の質」は著しく不良なものである。

 安倍政権は「究極の売国政策」である「TPP参加」に突き進む体制を整えている。この「売国政策」を阻止するということは、即ち、日本のTPP批准を阻止するということである。

 8月20日、秋の臨時国会でのTPP阻止に向けて、新たな国民運動がキックオフされる。
「TPPを批准させない!全国共同行動8.20キックオフ集会」

※続きは8月7日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1508号「日本農業壊滅が目的のハゲタカ主導JA解体」で。


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・植草一秀の『知られざる真実』

 

 

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