水産業の将来に大きな危機感、仲卸大手として魚食拡大に工夫(後)
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(株)アキラ水産
魚食拡大に欠かせない加工、目指すのは高付加価値化
魚食拡大には、おいしく食べてもらう工夫も必要だ。そこで同社は、加工にも熱心に取り組む。その結果、生まれたのが「アキラの鯛茶」だ。もともとは同社を商用などで訪れた人向けにお土産として渡していたが、評判が良かったため商品化したもの。これが国内大手航空会社の機内誌に紹介されるや、全国から問い合わせが来るようになったという。
好評の理由は、市場内に加工工場を持っているからだ。この工場は07年、「魚をもっと身近においしく」という願いを込めて、同業他社に先駆けて開設。場所の利を生かし、その日に水揚げされたばかりの新鮮な魚をそのまま加工することで、持ち味を損なわず商品化できる強みがある。主に「一夜干しセット」や「あきらめんたい」などをつくっていたが、鯛茶がブレークした追い風に乗り、同13年にグループ会社、アキラ・トータルプランニングとして発足させた。
ところが、生産量にも限りがあることから、販売窓口は市場内のショップのみ。一般消費者が手に入れようと思ったら、なかなか困難であった。そこで、この状態では魚食拡大にはつながらないと、地元放送局の通販サイトに商品を提供し始めたほか、前述したベジフルスタジアムへの出店、さらにスーパーにも置くことにして拡販を図り、一段の事業強化を目指している。場外市場や道の駅を創設、長浜ブランドで集客する案も
その一環として、16年7月には古賀市に500坪の敷地を持つ加工工場を新設。月商3,000万円を目標に掲げている。この工場は、厚生労働省が食品衛生管理の国際基準であるHACCP(注)導入を食品製造業に義務化する方針であることを受け、同基準に対応している点が大きな特徴だ。
「魚は、天然ものを漁獲するにしても養殖して育てるにしても、すごく手間がかかります。さらに料理して食卓に上らせるまでに、また手間がかかる。そこを解決していかないと、水産業は衰退していくばかりです。そこで、ビジネスとして成り立たせるためには味付けまでし、ブランディングするなどして付加価値を上げていく必要がある。うちはアキラブランドというプロとしての誇りがありますから、高級ブランド化していきたいですね」。
そう話す安部社長は先々、飲食業に参入することも視野に入れ、攻めの姿勢でいくつもりだ。
しかし、自社ばかりではなく、業界全体の底上げも常に頭のなかにある。その1つが、福岡市のウォーターフロント構想を活用して、東京・築地のような場外市場や道の駅のシティ版をつくり、長浜というブランドをもっとアピールすること。地元はもちろん、全国から集客して魚食拡大につなげたいと考えている。
九州地区水産物卸組合連合会の会長も務める安部氏だけに、その手腕に期待したい。(了)
(注)HACCP(ハサップ):食品製造で原材料の受け入れから、製品のできあがり、出荷までの工程で、微生物による汚染や異物混入などの危害を予測し防止につながる加熱・殺菌、金属探知機による異物検出などを継続的に監視・記録する衛生管理のシステムのこと。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:安部 泰宏
所在地:福岡市中央区長浜3-11-3-711
設 立:1960年4月
資本金:2,000万円
TEL:092-711-6601
URL:http://www.akirasuisan.co.jp<プロフィール>
安部 泰宏
1939年3月福岡市生まれ。福岡大学附属大濠高校卒業。(株)アキラ水産代表取締役社長を務める一方、全国水産物卸組合連合会副会長や九州地区水産物卸組合連合会会長、福岡市鮮魚仲卸協同組合理事長として魚食拡大をめざし多忙な毎日を送る。福岡商工会議所副会頭。11年に旭日双光章受章。法人名
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