中国経済新聞に学ぶ~訪日中国人の「爆買い」減速が顕著
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2年連続の中国経済下降と円高により、ついに訪日中国人も財布の紐の重みを感じるようになった。来日中国観光客の人数は増え続けているが、購買力は顕著に下降している。去年の流行語にもなった「爆買い」の時代はすでに終わろうとしているのだ。
免税販売大手ラオックスが12日発表した2016年6月中間決算は、売上高が前年同期比22.4%減の350億円、営業利益が同90.9%減の4億円だった。純損益は4億円の赤字(前年同期は46億円の黒字)に転落した。
ラオックスは2009年に、中国の大手家電量販店を運営する蘇寧雲商の傘下となった。尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題による日中関係の悪化や震災などの悪条件が重なったが、アベノミクスを背景とした円安進行などに伴う訪日観光客の急増が手伝い、2014年12月期には、14期ぶりとなる最終黒字を達成した。現在は全国41店舗に免税店を展開している。
訪日外国人向けのインバウンドの先駆者として、国内、中国の両国メディアから注目を浴び、2015年春節を機にメディア露出も増え、2015年のユーキャンの日本流行語大賞の大賞「爆買い」は、羅治文社長が受賞した。
しかし、12日の記者会見で羅治文社長は「去年は『爆買い』の現象もあって少々、過熱気味だったが、今は通常の状態に戻った」と説明したが、訪日中国人を中心とした来店客のニーズが変化し、売れ筋が高額の時計や炊飯器などから、価格の安い医薬品や化粧品に移っていることは大きなダメージとなった。平均購買単価は昨年1年間の3万3820円が、4~6月には2万2922円にまで落ち込んだ。ラオックスの売上は、足元ではさらに厳しくなっている。今年4月が前年同月比26%減少、5月は44%減少、6月も49%減少と歯止めがかからない状態だ。
ラオックスは16年2月通期の業績予想を2月時点から大幅に下方修正し、売上高が前年比29.9%減の650億円、営業利益は同85.4%減の12億円の見通しとした。
ラオックスが赤字に転落した要因は、円高による訪日中国人観光客の減少と、購買物が高級品から日用品にシフトしたことによる客単価の低下だ。宝飾品や時計、家電製品などの売上が激減して、日用雑貨や化粧水、ファンデーションといった小物が増えている。炊飯器をまとめて買うといった人の数も減っているようだ。浙江省から旅行に来た李燕さんは中国経済新聞の取材に対しこう語る。3年前、彼女は日本の商品を売るネットショップをタオバオに開設した。アベノミクスの発展に伴う円安のため、彼女はほぼ2カ月おきに日本に来て商品を大量購入し、中国に持ち帰っていた。利益は50%以上にも達したという。しかし、今年の6月に入って円高が進み、年初と比べて日本円は15%以上も高くなっている。日本での大量購入のためのコストも大幅に増加し、販売による利益は減り続けている。もし日本円が1ドル90円レベルまで高くなれば、ネットショップを閉店せざるを得ないと彼女は心配している。
今年から、中国の企業家たちの日本視察の人数も大幅に減少している。東京にある中国の企業代表団の視察を専門とする旅行社によれば、1~6月の顧客数は前年同期に比べて45%も減少しているという。
「去年なら、こういった企業たちは成田空港に到着するなり『銀瓶(編集部注:純銀製の茶器)を買いたい、どれほど高くても構わない』と言っていました。今年は東京に着くと病院で健康診断を受け、銀瓶の話をする人なんてほとんどいない。消費傾向の変化、そして無駄遣いをやめたことがはっきりと感じられます。」
北京・上海の不動産は値上がりを続けているが、中国のGDPは下降の一途をたどっている。清華大学とゴールドマン・サックスによれば、今年1~6月のGDP成長率は去年同時期に比べて0.4%減少し、6.6%になると予測されている。銀行は融資条件を厳格化し、中小企業は借入の難しさを感じている。同時に、中国経済の見通しに対する不安から、中国の消費者の消費欲求も下がり始めている。
中国人観光客の「爆買い」減速のもうひとつ大きな要因は、中国政府が4月上旬、個人消費者が海外から通信販売で輸入する際の税徴収を強化したことだ。これに併せて、空港での通関検査が以前に増して厳格化されている。海外旅行1回に当たり5,000元(約7万5,000円)と定められた免税範囲そのものは変わっていないが、中国駐在の日系通関業者によると「これを超える物品を持ち込もうとした場合、容赦なく課税される可能性が大幅に高まった」のだという。中国人訪日客は今後、税負担を覚悟の上で日本でのショッピングを続けるのか、それとも購入額を控えるのか、迷う時期が来た。訪日客向け消費税免税店の認可数は、日本全国で3万5,000店余りに達し、前年同月と比べ2倍近くに増加している。免税店をめぐっては、政府は当初、数値目標として東京五輪開催の2020年に全国で2万店と掲げていた。ところが昨年までの円安傾向などが後押しし、当初の予測を大きく上回るペースで日本中に拡散している。当分の間はまだ右肩上がりで増えていくことだろうが、ラオックスのように、中国人の「爆買い」に過剰期待して、事業を拡大するのは危険でもある。
中国人観光客の訪日目的も、買い物ではなく、食や文化、教育や医療に変わってきている。特に、個人旅行者やリピーター客はこの考えが顕著だ。爆買いという言葉を聞くと「モノ」をイメージする人が多いが、いま中国人観光客は「体験」を求めて日本にやってくる人が増えている。サービス分野が小売りの次の「爆買い」対象になる可能性は高い。
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