立憲民主党福岡県連は2日、常任幹事会を開き、城井崇衆議院議員の代表辞任を承認した。辞任理由は、参院選福岡選挙区で党公認の野田国義氏が敗れた責任を取るためとしている。ただ、県連内には「総括も終わらぬうちに投げ出した」と批判する声もある。
立憲福岡県連の常任幹事会は、毎月初旬の土曜日に開催されるのが恒例となっている。今回も冒頭を除き非公開で行われた。常任幹事会は県連所属の国会議員、県議・福岡北九州両政令市議、各総支部長で構成されている。
そこでどのような話が出たのだろうか。県連関係者によると、「無党派層も含め、右傾化している部分がある」などの認識が示され、「党の政策を伝える工夫が必要」「左右の問題というより、国民の生活実感からくる上下対立ではないか」などの意見が出たという。
立憲をはじめとする野党は、投票率が上がれば自民党への批判票が野党に流れると見ていたが、実際には、参政党や国民民主党といった保守的な新興勢力に流れた。立憲の野田氏は前回2019年の参院選で、36万5,634票を獲得していたが、今回は30万3,624票と約6万2千票も減らした。
選挙戦の取材では、参政党や国民民主党の演説会に、若い世代を含む現役世代が多数参加していた。一方で、野田氏の演説会は告示前の集会を含め、中高年の姿が目立った。今回の投票率の上昇は、これまで選挙に行かなかった現役世代の投票行動が要因とみられる。
こうした状況をどう受け止めているのか。立憲の若手議員数人に話を聞いた。ある県議は「うちの党は現役世代に訴求する政策が弱い」と語った。実際、自民も立憲も組織団体や高齢者向けの政策が多い印象があり、既存政党への失望の背景にはこうした点が挙げられる。
「日本人ファースト」を掲げる参政党への警戒感が各方面で高まるなか、元朝日新聞政治部次長・鮫島浩氏は、7月31日のYouTubeチャンネル「鮫島タイムス」において「最大の敗者は立憲」で「リベラルの崩壊」「左右対立ではなく上下対立」と指摘した。先日の常任幹事会で出された「国民の生活実感からの上下対立」との発言は、こうした視点を踏まえたものだろう。https://www.youtube.com/watch?v=_Ae5574oYIw
立憲を含めた既存政党が、広範な国民の声をすくい上げる政治を行ってこなかったことをまず反省すべきだろう。
野田氏の3選について、当社では一昨年から問題提起を行ってきた。昨年の公認決定に至る過程では、県連や各総支部内に異論があるにもかかわらず、城井氏が半ば強引に野田氏を公認したことを批判した。支持団体の連合福岡や労組のなかにも異論があった。
安倍元首相の事件後、政界構造が一変。全国的に注目される複数区の福岡では、多くの立候補が見込まれ、「指定席」とは言えない情勢だった。「時間がないなかで現職が出るという意志がある以上、やむを得なかった」と語った同党所属の地方議員もいたが、結果として「危うい」との予測が的中してしまった。
県連代表辞任について、城井代表は「戦略も戦術も大幅な見直しが必要で、早期に態勢移行に着手すべきだと判断した」と語っているが、党内外のさまざまな声をまず踏まえて、組織のトップとして体制の立て直しを示すべきだったのではないか。
ある福岡市議は「責任をスパッととるというのは考え方として大事ではないか」と理解を示したが、県連内部からは「総括が終わる前に辞めるのは無責任ではないか」との声も聞かれる。
新たな代表が決まる9月13日の常任幹事会までは、県連の規約に基づき、県連の代表代行を務める稲富修二氏が代表の職務を務める。何度も自民・鬼木氏との選挙区での戦いに敗れてもあきらめなかった稲富氏にとって、「敗戦処理」は正念場となるだろう。
【近藤将勝】