佐世保児相問題、県民の弱き声を拾った山田博司県議(前)
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1年前の夏、行政の不当な判断によって、家族から引き離されていた男の子が、約1年半の時を経て家族が待つ家へ帰ってきた。男の子の家は、決して富裕層ではなく、父親はごく普通のサラリーマン。地域の有力者や企業経営者、政治家などと特別なつながりがあるわけでもない。その助けを求める声はか細いものであったが、「県民全体のために働く」という信条を持つ1人の政治家の心には強烈に響いた。
調査せず虐待と決めつけ
2014年3月31日の日曜日、長崎県佐世保市で、小学2年生の男児が家族のもとから突然引き離されるという事件があった。自宅近くの公園で友だちと遊んでいた男の子を佐世保市職員がタクシーに乗せて佐世保こども・女性・障害者支援センター(以下、佐世保児相)へ連れ去った。まさに「突然」であった。男児が公園の花見客に食べ物をねだるなど、強い食欲を示していたことから、ネグレクト(育児放棄)が疑われた。しかし、母親や姉弟がいた男児の家庭を市職員が訪問することはなく、男児を受け入れた佐世保児相が家庭を訪問(調査)したこともなかった。
親が適切な栄養を与えていないこと、または食事制限が疑われたが、母親は、男児がいわゆる「痩せの大食い」で、他のきょうだいよりも食べる量が多かったと反論する。あまりにも食べる量が多いため、両親が心配して男児を病院に連れて行ったほど。家庭では、他のきょうだいと同じ量を食べさせ、それ以上は与えないよう注意していた。この場合、前出のネグレクトにあたる行為と言えるのだろうか。行政側は家庭調査による裏付けを行わず、グレーのまま、男児を家族から引き離すという判断を行ったのである。
家族は男児が誘拐されたのではないかと心配し、母親はひどく狼狽した(後に、佐世保児相からの電話に安堵したとさえ語っている)。そして、男児を迎えにいった両親に突き付けられたのは、「一時保護」という理解し難い児相側の判断だった。児相職員は、男児を帰すために、虐待があったことを認めるよう促した。身に覚えのない虐待である。それでも男児を取り戻すために、母親は一瞬、その要求を受け入れることを考えた。しかし、男児の将来に「昔、親から虐待されていた」という禍根を残してはいけないと考えて要求を拒絶。そこから長く辛い戦いが始まった。
家庭調査を一切しない、一方的な決めつけとも言える理不尽な「一時保護」。家族は父親の転勤にともない、大分から佐世保へ引っ越してきて間もなく、地域にはまだ友人・知人も少ない。それでも男の子の家族を応援する和が少しずつ広がっていった。
親族や児童委員が同行し、幾度も佐世保児相へ通ったが、児相職員は強硬な姿勢を崩さなかった。行政が相手ということで地元の政治家に相談したが、彼らの腰は重く、口ほど動いた雰囲気は感じられず、状況に進展は見られない。なかには、児童福祉の充実を政治信条に掲げながら何ら反応を見せない地方議員もいた。
そのようななか、男児の家族の切実な訴えに耳を傾け、熱意をもって行動した政治家が長崎県議会にたった1人いた。五島市選出で現在4期目の山田博司県議会議員である。(つづく)
【山下 康太】▼関連リンク
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