安倍政権の大失政で、GPIFは直近1年で11兆円損失
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、1年間で11兆円ものGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の残高を減少させた、安倍政権の年金資金運用の失敗について言及した、9月3日付の記事を紹介する。
世界最大の年金運用資金。それが、GPIF=年金積立金管理運用独立行政法人である。
2015年6月末は残高が141兆1,209億円だった。これが、本年6月末には129兆7,012億円になった。1年間で11兆4,197億円減少した。8.1%の減少である。
国民の老後の生活を支える年金資金。それが、1年間で11兆円も減ったのだ。笑って済ませられる問題でない。
その理由は単純明快だ。安倍政権は年金運用改革の看板を掲げて、2014年10月末に年金資金運用の基本を大転換した。これまでは、年金資金は国民の大切な老後資金だから、できるだけ安全に運用することを基本に置いてきた。安全に運用するとは、リスクの大きい資産にはあまり資金を投入しないということだ。
金融の世界でリスクの大きい資産とは、株と外貨資産だ。だから、株と外貨資産への資金配分を抑制していた。ところが、2014年10月31日に、安倍政権は年金資金運用の基本を大転換した。株と外貨資産への資金配分比率を一気に引き上げたのだ。ところが、金融市場の潮流は2015年6月を境に大転換した。それまでの円安=株高の基本構図が円高=株安の基本構図に転換した。ドルが上がるときには外貨資産を多く持てば大きな利益を得られる。株が上がるときには株式を多く持てば大きな利益を得られる。しかし、逆にドルが下がるときにドル資産を大量に保有していれば大きな損失が生まれ、株が下がるときに株式を大量に保有していれば大きな損失が生まれる。当たり前のことだ。
したがって、年金資金の運用で大事なことは、金融変動の大局を正確に読んで、その金融変動に合わせて基本運用スタンスを変更することだ。しかし、金融変動を正確に読み抜くことは容易でない。
私は中期の金融変動を予測することを仕事としている。他のプロフェッショナルに比べれば、予測精度は格段に高いと自負している。3カ月から1年の単位での経済金融変動を読み抜くことが私の実業としての仕事の中核だが、この分野での予測精度では他に類を見ない高いパフォーマンスを示してきたと言ってよいだろう。
それでも、打率10割というわけにはいかない。完璧に予測し抜くことは不可能である。予測を正確にできないなら、運用は保守的にならざるを得ない。バブル崩壊の時代、株式を持ち続けた人は、平均すれば巨大な損失を蒙った。他方、一切運用をせず、現金のまま保管し続けた人は、損失ゼロである。
GPIFが金融変動を読み抜く力を持たないなら、リスクを取る運用をやめるべきだ。運用は資金提供者のために行うもので、見通しを誤り、高いリスクを取って、巨大な損失を計上することは、資金委託者に対する背信行為である。民間の資金運用事業者が巨額損失を計上すれば、相応の責任を問われるし、場合によっては刑事責任さえ追及される。GPIFは金融変動にそぐわない間違った運用を行い、巨大な損失を計上している。
その一方で、許されないことは、GPIFが運用を委託している外資系を中心とする資金運用法人に法外な手数料を支払い続けていることだ。2015年度だけで、GPIFが支払った管理運用手数料は383億円である。こんな巨額の手数料が支払われながら、1年間で11兆円の損失を計上しているのだ。
要するに、政府と金融機関の癒着なのだ。収益が出るか、損失が出るかは、相場次第だ。運用機関が高い運用技術を持っているわけではない。GPIFが一括して独自に運用すればいいのだ。結果は変わらない。要するに、政府と金融機関が癒着して巨大な手数料収入が「利権資金」として支払われているだけなのだ。
安倍政権は失敗の責任を明らかにし、癒着金融機関への法外な手数料支払いを直ちに中止するべきだ。※続きは9月3日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1529号「GPIFの運用体制全体が巨大欠陥である」で。
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