2024年11月26日( 火 )

幹細胞コスメの真実(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 現在の「幹細胞コスメ」は、表現の問題で誤解が生まれている。というのも、幹細胞コスメには、実は幹細胞は入っていない。幹細胞は生きた細胞なので、化粧品に入れるとすぐに死んでしまうし、そうすると幹細胞の分裂・再生能力も失われてしまう。それだけでなく、細胞は死ぬ際に毒性物質を排出するので、幹細胞は化粧品に入れることができない。

cosme2 化粧品に使われている成分は、正確に言うと幹細胞ではなく、「幹細胞培養液」である。幹細胞を培養する際に、幹細胞から多様な成分が排出される。この成分のなかにはコラーゲンやエラスチンなどの各種タンパク質をはじめ、EGFなどの成長因子などが入っている。幹細胞コスメは、幹細胞培養液から抽出した有効成分をそのまま入れたり、抽出した成分を遺伝工学の技術で組み替えて化粧品に入れたりしている。
 今後は、このような誤解をなくすためにも、「幹細胞培養液コスメ」という名称にしないといけないだろう。

 また、幹細胞コスメの安全性を問題視する声がある。他人から与えられた血液、または組織と関わりのある培養液には、各種ウイルスに感染されている可能性を排除できない。それに、有効成分以外に、どうしても他の成分が混ざる可能性がある。さらに製造工程のなかで、ウイルスに感染してしまう可能性もあるとのことだ。
 しかし一方で、こうした安全性への懸念の声に対して、「化粧品は皮膚に1~2%くらいしか浸透しないので、それほど安全を脅かすようなレベルでもない」という指摘もある。
 こうした懸念を解決するため、3回のウイルス検査を義務付ける必要があることと、完璧な製造工程管理と設備基準を設ければ、安全性は問題にならないという主張もある。

 韓国の場合、化粧品は主要輸出品目として浮上しつつある。中国市場を中心に、輸出は大幅に成長している。しかし残念ながら、化粧品の原料の8割は輸入に依存しており、化粧品の輸出が伸びれば伸びるほど、原料の輸入が増加している。とくに、バイオ原料の場合には、環境と資源保護の目的で規制の動きもあり、業界では神経を尖らせている。
 そのようななかで、原料を自給自足でき、完成品の輸出が伸びれば、一挙両得である。

 なお幹細胞は美容だけでなく、今後、再生医療の分野でも大きな役割が期待されており、次世代の成長エンジンとして全世界が注目している。とくに、グローバル化粧品会社も今までの化粧品では成長に限界があると感じ、新しい突破口として幹細胞コスメに期待を寄せている。

 最近、サムスングループではグループ役員を一堂に集め、バイオ分野に関する説明会を開いたと新聞に報じられている。バイオ分野の重要性を役員に再認識してもらうためだという。幹細胞コスメで、もし世界をリードすることができれば、サムスンの半導体が世界で収めた成功ほどの成果が期待できると、専門家は説明する。

 最近、韓国政府も歩調を合わせ、法律を改正したりしている。今までは韓国では幹細胞治療を受けられないため、日本に渡航したりしていた。しかし、法律が変ったことで、韓国でも幹細胞の治療を受けることができるようになった。
 今後、幹細胞コスメの成長が期待されているだけに、安全性が確立されていない悪徳商品の出現をどのように防止するのかについても、対策を練る必要があるだろう。良し悪しをきちんと認識したうえで、幹細胞コスメを選ぶことが大事である。

(了)

 
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