豊洲新市場の構造計算に【耐震偽装】の疑いあり!(3)~水産仲卸売場棟
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協同組合建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏
3.構造階数の不整合?と推察される部分
水産仲卸売場棟の構造計算書における構造階数が、計算書の中で食い違いがあります。■「層間変形角・剛性率・偏心率・壁量」の頁より
■「2.架構設計用風圧力と設計用地震力の比較」の頁より
上記の2つの計算書では、1階から3階までをまとめて、1階の階高を6.2mとした頁と、1階の階高を3.4m、2階の階高を2.8mと分けた頁が存在します。
構造図を見ると、「2階」部分は中2階的に一部に存在する床のようです。しかし、梁はピン接合ではなく、剛接合(ただし、ダイヤフラムはない)となっているので、工学的には、構造階として扱うべきであると私は思います。(これは主観でありますが、豊洲の構造計算に採用されたモデル化は民間では通用しません)
この計算書では、層間変形角が1/200を下回っていること(明確な法律違反)について、コメントを追記しており、層間変形角が規定より大きい建物であることがわかります。層間変形角とは、地震など水平力による、層と層の間(いわゆる「階」)の変形量と階高との比率を表したものです。変形量÷階高なので、同じ変形量でも、階高が高いほど、安全性が高い数値となります。
たとえば、地震時の水平方向の変形量が2cm、階高を300cmとした場合の層間変形角は、2cm/300cm=1/150 となります。
同じ変形量で、階高を600cmとした場合、2cm/600cm=1/300 となります。
建築基準法の規定を、個人の判断で変えることは絶対にできません。これは推測ですが、設計者は、層間変形量を抑えるために、階高が高くなるように設定したのではないでしょうか。(あくまで推測の域です) 仕上げ材が追従できる場合、層間変形角の緩和がありますが、それは、あくまでも、純粋な鉄骨構造における緩和措置であり、豊洲のようなSRC構造の場合の層間変形角は、1/200以内とすべきです。
構造計算に使用されるプログラムは一貫性が求められます。姉歯事件における構造偽装は、構造計算書に一貫性がない(別々の計算書を合体)計算書を作成し、耐震強度が不足している建物を、耐震強度があるかのように見せかけたものです。国交省は、この事件をきっかけに、構造計算書の一貫性についても法改正により厳しく規定したので、審査機関も、当然、厳しく審査しており、法改正以降は、一貫性の無い構造計算書は存在しないものと思っていました。しかし、豊洲の場合、前述したように、「計画通知」という、いわば役人たちの仲間意識による「ザル」的な審査により問題点がノーチェックだったため、一貫性の無い構造計算書が提出されても何ら指摘されることがなかったのではないかと思われます。(つづく)
※この記事は、豊洲新市場の一部である水産仲卸売場棟に関する設計図書の内、提供された資料に基づくものです。また、私が検証したものは、ごく一部に過ぎません。すべての設計図書が入手できれば、さらに検証をすることは、やぶさかではありません。
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