相次ぐリコールで、危機にあるサムスン(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
サムスンは、創立以来最大の危機に瀕している。地震などにより建物が破壊されるのは、いくつかの振動が同時に発生し、ものすごい破壊力が働くときであるが、まさにサムスンには現在、いくつかの悪材料が同時に発生している。
サムスン電子は、アップルと共に世界のスマホ市場をリードしている会社である。現在、中国企業の追い上げを受けて快進撃は止まっていたとしても、以前としてサムスンは市場シェアでは、世界トップの座を維持している。サムスンは低価格の中国企業の製品に応戦しながら、アップルとの戦いで勝利を収めないといけないという、切羽詰まった状況である。
そのような状況のなかでサムスンには、アップルのiPhone7より少しでも早く新製品を出荷し、機先を制したいという焦りがあったのだろう。サムスンは虹彩認識などの革新的な技術を取り入れたGalaxy Note7を発売し、発売当初は世界的な関心を集めた。なお、韓国国内でもGalaxy Note7の予約販売台数は、40万台に到達。Galaxy Note7の好調さに、サムスンもスマホ事業のV字回復を期待するほどであった。
ところが、発売からわずか5日後に、充電中にスマホが爆発したという書き込みや写真がインターネットに掲載され、波紋が拡大。このような発火・爆発事故は、その後も収まるどころか、相次いで報告された。
これを受けてサムスンは、これをバッテリーの不良と判断。バッテリーを交換する部分リコールで対応しようとした。だが、バッテリーを交換しても発火が発生し、サムスンはバッテリーだけの問題ではないことに気づいた。そのためサムスンは、250万台の全面リコールに踏み切った。大きな損失を覚悟したうえで、顧客の安全を最優先した全面リコールは、市場に好意的に受け止めた。リコールでのイメージの悪化は避けられないが、これ以上の信用失墜を防止するための適切な勇断だと、高く評価された。ところが、その後も爆発の原因究明は進まず、再出荷できるような状況にはならなかった。結局、サムスンはGalaxy Note7の生産・販売打ち切りを決定。証券業界では、今回の生産・販売打ち切りの決定により、サムスンが被った機会損失コストは、少なく見積もっても7兆ウォン以上になるだろうと推算している。
今回のリコールと販売中止は、サムスンのブランドイメージに大きな打撃を与えたが、さらにこれが長期化していれば、その被害額はもっと膨らんでいただろうと指摘されている。
Galaxy Note7には半導体も多く実装されており、Galaxy Note7の販売中止によって、スマホの販売だけでなく、半導体の売上にも影響が出ている。さらに、今回の当初の販売好調で、その業績予想に合わせて部品などを用意していた中小企業の被害ははなはだしい。
先日、知り合いの大学教授に聞いた話によると、大学生の9割くらいは今回のリコール問題で、Galaxyの代わりにiPhoneを持つようになったという。一度、iPhoneのシステムに慣れてしまった消費者が、今後、Galaxyに戻ってくるかどうかはよくわからない。それを考えると、今回サムスンは単にGalaxy Note7の販売機会の喪失だけでなく、ものすごく大きなダメージを受けたことを意味する。
(つづく)
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